平成18年3月20日
書名:マーケティング戦略
著者:沼上 幹
発行所:有斐閣アルマ
序章 イントロダクション
「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)
↓
「ルーチンの仕事はノンルーチン(創造的)な仕事を駆逐する」(計画のグレシャムの法則)
「戦略とは」⇒自分が将来達成したいと思うあるべき姿を描き、そのあるべき姿を達成するために自分の持っている経営資源(能力)と自分が適応するべき経営環境(周りの状況)とを関連づけた地図と計画(シナリオ)のようなもの
⇒市場に関して、市場を中心に捉えて、戦略的に思考すること
【戦略的に思考するためのスタンス】
①大きく考えること
②未来を考えようとすること
③論理的に考えること(フィットしているかしていないか)
第Ⅰ部 マーケティング戦略
第1章 マーケティングミックス
【マーケティング・ミックス】
①製品(Product)
その製品が提供している本質的なサービスとその製品に付随している補助的なサービスがある。
【重要な点】
①本質サービスが顧客のニーズにフィットしているか否か
②本質サービスをより魅力的にするように補助的サービスがつくられているか。
○本質サービス
製品を物理的な特徴で捉えずその製品から顧客がどのような満足を引き出そうとしているかを考えることが重要。製品とはそこからさまざまな満足を引き出すことができるサービスの束だと考える必要がある。
○補助的サービス
ブランド・おまけ・保証・メインテナンスサービスなど
【プロダクトミックス】
ラインの幅(広い・狭い)とラインの奥行き(深い・浅い)からなる。
あらゆるカテゴリーを捉えている場合は「フルライン」
②流通チャネル(Place)
・商取引の流れ⇒商流
・ものの輸送・保管の経路⇒物流・ロジティクス
○小売業と卸売業
【重要な点】
①消費者と「出口」がフィットしているか否か
②その最終的な小売業者に達するまでに商売上どのような道筋をたどらせるのか
・一般論では最終的な商品を届ける範囲が広がれば広がるほど流通経路も長くなる
○チャネル政策
閉鎖型チャネル政策
開放型チャネル政策
○物流システム
サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)
③プロモーション(Promotion)
企業が顧客に情報を伝達する4つの手段
①広告・宣伝
営業マンは単にモノを売っているだけではなく、企業と顧客との情報のやりとりを担っている考えなければならない。営業マンは行動によって企業イメージを顧客に伝え、顧客のニーズと自社の製品の問題点を企業に持ち帰って整理すると言う重要な機能を果たしている。
③広報活動
④販売促進
○プッシュとプル
・プッシュ戦略
メーカーの営業マンが1次卸しや2次卸しに対して説得を行ったり、応援を行ったり、販売促進費などを使って様々な資金援助をして自社製品を顧客の側に押していく戦略である
・プル戦略
大規模な広告を行ってまず最終消費者にブランドを認知させ、彼らが小売店に行って指名買いをするように仕向ける方法である。
④価格(Price)
価格を決める際に目配りをすべき要因
①その製品のコスト
規模の経済性・経験効果等留意
②競争相手が設定している価格
③顧客の財布の具合
【価格を安くしても良い場合】
①他企業が低価格に追随できないか
②価格を低くすることで市場が拡大して業界全体の市場規模が大きくなるか
○マーケティングミックス
4Pのそれぞれが互いにフィットしている必要がある。
・ヨード卵「光」のケース
「プロダクト」食品と薬の中間
「プライス」高めの固定価格
「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・商店街の八百屋さん
「プロモーション」説明型(八百屋さん)プッシュ戦略と広報重視のプル戦略
・ルイヴィトンのケース
「プロダクト」丈夫で長持ちする機能性バック
「プライス」高いが地域毎に若干上下する。
「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・直営または正規代理店
「プロモーション」広告掲載はしない。ただし偽ブランドに対するしばしば批判広告は出す。店舗においても製品が直接手に取れないようになっている。
第2章 ターゲット市場の選定
○セグメントとセグメンテーション
・セグメンテーション(市場細分化)
マーケティングミックスに対して類似の反応を示すような同質的な市場部分に分解すること
⇒ある程度同質的なセグメントに分けることでより効率的効果的に働きかけることができるようになる。
・セグメンテーションの基準(軸とか次元)
【地理的軸】
エリアマーケティングには次の2つの方法があるがどちらもかかしてはならない。
①その地域に住んでみて、その地域の内部者の視点を獲得する方法
②その地域の様々な特徴を統計などを用いて鳥瞰的に大きく捉える方法
【人口統計的(デモグラフィック)な軸】
国勢調査で質問される項目
【心理的軸】【行動面の軸】
両者は区別しにくいが、前者が人間の本質的なタイプを示し、後者がそのタイプが行動として表れたものと考える。
○軸の組み合わせ
どの地域(Where)にいる誰(for Whom)のどのようなニーズ(to meet What)を満たすのかを決めて初めて特定の市場セグメントを定義したことになる。
○セグメンテーションのチェックポイント
①セグメント内が同質
セグメント内の同質性が高ければ、特定のマーケティングミックスをつくるだけで効率的に潜在的な顧客グループに働きかけることができる。
②セグメント間が異質
③操作性
そのセグメントの市場規模が予想できるかどうか。そのセグメンテーションを行うことでマーケティングミックスの作り方に対して具体的な示唆が得られるか否かということ。
④セグメントの規模
○3つのアプローチ
①単一ターゲットアプローチ
単一の市場セグメントのみを対象にして、その市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。⇒ニッチャーの戦略
②複数ターゲットアプローチ
複数の市場セグメントを対象にして、それらの市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。すべてのセグメントをカバーする場合を特にフル・カバレッジと呼ぶ。フルカバレッジする製品ラインはフルラインとなる。⇒リーダーの戦略
③結合ターゲットアプローチ
一旦細分化をおこなった市場セグメントをいくつか同時に受け入れられるような「最大公約数的」なマーケティング・ミックスを構築するものである。
○ターゲットセグメントと4つのPのフィット
マーケティングの基本戦略⇒ターゲットセグメントにフィットするような4つのP(マーケティング・ミックス)を創りあげること。
【手順:下記①~③を繰り返す】
①セグメンテーション:売りたい製品のイメージを念頭においてセグメンテーションを行う
②ターゲット市場の選定:多様なセグメントの中からターゲットセグメントを選び出す
③マーケティングミックスの構築:選ばれたセグメントにフィットするようなマーケティングミックスを構成する。
・富士写真フィルム「チェキ」のケース
①ターゲット市場:女子高生から25歳くらいまでの女性
プリクラの大ヒット⇒「画像コミュニケーションのニーズ」がある。
日本国内(地理)・15歳~25歳(人口統計)・女性(人口統計)・画像コミュニケーション手段を多用する(行動)
②マーケティングミックス
・プロダクト:小型で持ち運びがしやすい、ネーミングが女子高生に愛される
・プライス:本体価格1万円、フィルムが10枚入りで700円
プリクラ(1回300円)を意識し、割安感が出るよう工夫
・プロモーション:イベントの実施⇒口コミと歩行者へのアピール
・プレイス:当初(プッシュ戦略)⇒通常のカメラ屋
後(プル戦略)⇒スーパーやコンビニ(開放型チャネル政策)
第3章 製品ライフサイクル
○製品ライフサイクルの段階的特長
導入期
成長期
成熟期
衰退期
売上高
低水準
急速上昇
緩慢な上昇or下降
下降
利益
僅少もしくはマイナス
最高水準
下降
低水準orゼロ
顧客
イノベーター/マニア
早期大衆追随者
後期大衆追随者
遅期追随者
競争
ほとんどなし
増加
企業数多数
減少
戦 略
上澄み価格戦略
浸透価格戦略
戦略の 焦点
市場の拡大
市場の拡大
自社ブランドの 浸透
シェアの防衛など
撤退のタイミングなど
戦略の 強調点
製品の認知
低価格化
ブランド選好
マーケットの地位別に異なる
選択肢多数
マーケティングミックス(4P‘s)
プロダクト
本質 サービス
本質 サービス
補助的サービス
マーケットの地位別に異なる
①撤退:タイミング
②展開:製品改良・用途拡大・市場開拓
③存続:残存者利益
プレイス
閉鎖型
開放型
開放型
プロモーション
プッシュ
プル
プル
プライス
高水準
低水準
低下
①導入期
戦略的な課題:市場の拡大⇒普及を妨げているボトルネックを明らかにし、それを除去する。
購買行動モデル:アイドマ(AIDMA)モデル
Attention(注意)⇒Interest(関心)⇒Desire(欲望)⇒Memory(記憶)⇒Action(行動)
・上澄み価格政策:初期のイノベーター(マニア)を相手に製品の開発費や初期のプロモーション費用など、さまざまな導入期のコストを回収してしまるような価格政策。
・浸透価格政策:思い切って原価われの価格を設定し、一気に市場を立ち上げるような価格政策
②成長期
競争相手への対応の仕方が最重要ポイント⇒自社ブランドを選好するように仕向ける
閉鎖型チャネルから開放型チャネル政策へ
プロモーションもプッシュ型からプル型へ
③成熟期
通常は10%くらいの成長率のところが高成長と緩慢な成長の分かれ目である。
自分の獲得した顧客は離れにくいように、相手の顧客はできるだけ浮気させるように
⇒ブランドロイヤルティを確立した上で他社の顧客を奪う。
成熟期のマーケティング戦略は市場における地位によって違う。
④衰退期
撤退・展開・存続の3つの選択肢がある
・撤退:タイミングのとり方が難しい
⇒8ミリの例:富士フィルムはかなり早いタイミングで撤退したが、後に残されたエルモやチノンなどは業績が大幅悪化。
・展開:技術革新か海外市場など新規市場開拓
一眼レフカメラ:ミノルタのα7000のオートフォーカスによって減少傾向にあった市場が一時的に上向いた。
ホンダの「スーパーカブ」:日本市場からインドネシアなどのアジア圏を市場開拓
・残存者利益:みんなが残ると悲惨
自社のみが残ると「おいしい」が、多くの会社が残存者利益を求めて撤退しないことを決めれば、悲惨な競争になりみなが儲からない。
【ライフサイクルの注意点】
①ライフサイクルは変則的である:S字型曲線をそのまま当てはめるだけの作業にはくれぐれも注意が必要。
②自己成就的予言が成り立つ製品ライフサイクル
○カップヌードルのケース
・「熱いお湯さえあればいつでもどこでも食べられる」新しい本質的サービスを提供する製品として登場
・1個100円の高価格
・プル型プロモーションによる開放型チャネル政策
・アメリカでは、プッシュ型
⇒個々の製品のライフサイクルが長くなるか短くなるか。これはあらかじめ決められたものではなく、マーケティングミックス戦略によってつくりだせるものである。
第4章 市場地位別のマーケティング戦略
市場地位別のマーケティング戦略は、主として成長後半から成熟期を通じてマーケティング戦略を考える上で有効な指針を提供する。
○市場地位別の分類法(コトラーの分類法)
シェア1位か? ⇒YES リーダー
↓ NO
攻撃的か? ⇒YES チャレンジャー
↓ NO
独自の生存領域を持っているか? ⇒YES ニッチャー
↓ NO
フォロワー
○トップシェアの魅力 ⇒ 市場シェアが大きいほど、企業にはさまざまなメリットが生じる
①シェルフスペースの確保
②生産コストのメリット
・規模の経済性
・経験効果:累積生産量が2倍になるごとに単位当たりのコストが一定割合で低下する。
③トップシェア3つの留意点
・シェア1位だから嫌いと言う人が必ずいる。⇒比較的簡単に流通させることができる地域だけを対象にしている方が利潤獲得という点では望ましい。
・シェアのトップメリットが永続しない場合もある。⇒技術の交代期には注意が必要
(イノベーションのジレンマ)
・規模の経済や経験効果を見るときには同時にシナジー効果を調べる必要がある。
○市場地位別マーケティング戦略の定石のまとめ
戦略の項目/市場地位
リーダー
チャレンジャー
ニッチャー
フォロワー
目標
・業界最大の利潤
・プレステージの維持
・トップシェアの奪取
・高利益率
・マイペースの成長
・安定した売上
・存続
・したたかな成長
戦略の基本方針
市場全体の拡大&スキをつくらない
差別化
先手必勝
生存空間全体の差別化
リーダー製品の安価な代替品を供給する
ターゲット市場の選択
フルカバレッジ
①セミ・フルカバレッジ&決定的セグメントに焦点
②セミ・フルカバレッジ&集中&機動的展開
①速すぎない成長セグメントの選択
②狭いセグメントへの集中
経済性セグメント
4P’s構築の基本方針
・イノベーション
・同質化
模倣されにくい差別化
狭いターゲットへのファイン・チューニング
徹底的なコストダウン
4P’sの定石
プロダクト
(製品ライン)
フルライン
セミ・フルライン
(主戦場で深いライン)
狭く深いライン
浅いライン
プロダクト
(本質サービス)
業界平均より高品位
-
独自性
トップブランドのワンランク落ち
プライス
若干高め
4つのPのいずれか、あるいはすべてで差別化
高め
低め
プロモーション
積極的
ターゲット・媒体を絞り込む
抑える
プレイス
より広いチャンネンル(開放型)
より狭いチャネル
低価格志向の流通チャネルに集中
○リーダーの戦略 ⇒ トップシェアと最大利潤の確保
・市場全体の拡大の方法
①新しいユーザーを獲得する。
②新しい用途を見つけ出す。
③1回当たりの使用量を増やす。
・シェア防衛の方法
①直接対決:マクドナルド対ロッテリアの例 ⇒ 利益体質を悪化させる場合が多いためいい手だとはいえない。
②嫌がらせ:納入業者に対するパワーハラスメント等
③スキをつくらない:フルカバレッジ、同質化
ライバル製品をスピーディーに追いかけて同質化することができれば、結局リーダーが有利になる。
④イノベーション
新製品の導入、新しい流通チャネルの開拓、ユニークなプロモーション等
・シェア拡大
○チャレンジャーの戦略 ⇒ 差別化によってリーダーを攻撃
差別化:できるだけ同質化されにくいものでなければならない。
①リーダーのもっていない経営資源を利用する。
②リーダーが同質化を行えない内部事情を利用する。
(例)資生堂と花王
ジョンソン&ジョンソンとライオン
(基本方針)
①主戦場を決めて資源の集中投入をする。(決定的なセグメントに集中する)
②ひとつのセグメントを次々と個別撃破しながら多数のセグメントで順次支配権を握っていく。
○ニッチャーの戦略 ⇒ 広い視野を持ちながら 単一セグメントに経営資源のすべてを集中投入する
(例)モスフードサービスの例
・駅前ではない2等立地に進出
・みそ、しょうゆをベースとした日本的な味付け
・業界全体の低価格競争には追随せず
日本ルナの例
○フォロワーの戦略 ⇒ 競争を回避し、ある程度利潤をあげながら経営資源を確保していく。
経済性セグメント:リーダーやチャレンジャーが魅力を感じない、価格に敏感な市場を選択
○アサヒビールと他ビール会社の例(ドライ戦争)
キリンの戦略:徹底的な同質化戦略をとるべきだった?
第Ⅱ部 より広い戦略的視点を求めて
第5章 業界の構造分析
〇ポーターの5つの競争要因
業界の美味しさ度の見分け方
(下記の項目に当てはまるものが多い場合は競争が厳しく美味しさ度は低い)
・ 既存企業間の敵対関係
同業者が多い、業界の成長が遅い、固定コスト、在庫コストが高い、製品差別化がない、買い手をスイッチする費用が少ない、供給能力を微増させられない、競争業者間の戦略が多様である、成功すれば成果が大きい、退出障壁が高い
・新規参入の脅威 ⇒新規参入が起こらないよう、ある程度製品価格を低くしておくなどの防衛策をとらないといけない。
既存企業による規模の経済の影響が少ない、製品の差別化の程度が低い、巨額の投資が必要とされない、供給業者をスイッチするコストが低い、流通チャネルを確保しやすい、規模とは無関係の不利はない、政府の政策(許認可、補助金)がない
・ 代替製品の脅威
コストパフォーマンスが急速に向上している、代替品業界の利益水準が高い
・ 買い手の競争力
買い手が集中している、自社製品が買い手のコスト要因となる、自社製品が標準品である、自社から他へスイッチするコストが低い、買い手の収益が低くコスト圧力が高い、供給される商品が重要ではない、買い手が充分な情報を持つ
・ 売り手の競争力
寡占が進んでいる、代替品が市存在しない、売り手にとって重要な業界ではない、売り手の製品は重要である、売り手の製品の代替は見つけにくい、後方統合をする意思と能力がある
第6章 全社戦略
第7章 事業とドメインの定義
終章 戦略的思考に向かって
書名:マーケティング戦略
著者:沼上 幹
発行所:有斐閣アルマ
序章 イントロダクション
「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)
↓
「ルーチンの仕事はノンルーチン(創造的)な仕事を駆逐する」(計画のグレシャムの法則)
「戦略とは」⇒自分が将来達成したいと思うあるべき姿を描き、そのあるべき姿を達成するために自分の持っている経営資源(能力)と自分が適応するべき経営環境(周りの状況)とを関連づけた地図と計画(シナリオ)のようなもの
⇒市場に関して、市場を中心に捉えて、戦略的に思考すること
【戦略的に思考するためのスタンス】
①大きく考えること
②未来を考えようとすること
③論理的に考えること(フィットしているかしていないか)
第Ⅰ部 マーケティング戦略
第1章 マーケティングミックス
【マーケティング・ミックス】
①製品(Product)
その製品が提供している本質的なサービスとその製品に付随している補助的なサービスがある。
【重要な点】
①本質サービスが顧客のニーズにフィットしているか否か
②本質サービスをより魅力的にするように補助的サービスがつくられているか。
○本質サービス
製品を物理的な特徴で捉えずその製品から顧客がどのような満足を引き出そうとしているかを考えることが重要。製品とはそこからさまざまな満足を引き出すことができるサービスの束だと考える必要がある。
○補助的サービス
ブランド・おまけ・保証・メインテナンスサービスなど
【プロダクトミックス】
ラインの幅(広い・狭い)とラインの奥行き(深い・浅い)からなる。
あらゆるカテゴリーを捉えている場合は「フルライン」
②流通チャネル(Place)
・商取引の流れ⇒商流
・ものの輸送・保管の経路⇒物流・ロジティクス
○小売業と卸売業
【重要な点】
①消費者と「出口」がフィットしているか否か
②その最終的な小売業者に達するまでに商売上どのような道筋をたどらせるのか
・一般論では最終的な商品を届ける範囲が広がれば広がるほど流通経路も長くなる
○チャネル政策
閉鎖型チャネル政策
開放型チャネル政策
○物流システム
サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)
③プロモーション(Promotion)
企業が顧客に情報を伝達する4つの手段
①広告・宣伝
営業マンは単にモノを売っているだけではなく、企業と顧客との情報のやりとりを担っている考えなければならない。営業マンは行動によって企業イメージを顧客に伝え、顧客のニーズと自社の製品の問題点を企業に持ち帰って整理すると言う重要な機能を果たしている。
③広報活動
④販売促進
○プッシュとプル
・プッシュ戦略
メーカーの営業マンが1次卸しや2次卸しに対して説得を行ったり、応援を行ったり、販売促進費などを使って様々な資金援助をして自社製品を顧客の側に押していく戦略である
・プル戦略
大規模な広告を行ってまず最終消費者にブランドを認知させ、彼らが小売店に行って指名買いをするように仕向ける方法である。
④価格(Price)
価格を決める際に目配りをすべき要因
①その製品のコスト
規模の経済性・経験効果等留意
②競争相手が設定している価格
③顧客の財布の具合
【価格を安くしても良い場合】
①他企業が低価格に追随できないか
②価格を低くすることで市場が拡大して業界全体の市場規模が大きくなるか
○マーケティングミックス
4Pのそれぞれが互いにフィットしている必要がある。
・ヨード卵「光」のケース
「プロダクト」食品と薬の中間
「プライス」高めの固定価格
「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・商店街の八百屋さん
「プロモーション」説明型(八百屋さん)プッシュ戦略と広報重視のプル戦略
・ルイヴィトンのケース
「プロダクト」丈夫で長持ちする機能性バック
「プライス」高いが地域毎に若干上下する。
「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・直営または正規代理店
「プロモーション」広告掲載はしない。ただし偽ブランドに対するしばしば批判広告は出す。店舗においても製品が直接手に取れないようになっている。
第2章 ターゲット市場の選定
○セグメントとセグメンテーション
・セグメンテーション(市場細分化)
マーケティングミックスに対して類似の反応を示すような同質的な市場部分に分解すること
⇒ある程度同質的なセグメントに分けることでより効率的効果的に働きかけることができるようになる。
・セグメンテーションの基準(軸とか次元)
【地理的軸】
エリアマーケティングには次の2つの方法があるがどちらもかかしてはならない。
①その地域に住んでみて、その地域の内部者の視点を獲得する方法
②その地域の様々な特徴を統計などを用いて鳥瞰的に大きく捉える方法
【人口統計的(デモグラフィック)な軸】
国勢調査で質問される項目
【心理的軸】【行動面の軸】
両者は区別しにくいが、前者が人間の本質的なタイプを示し、後者がそのタイプが行動として表れたものと考える。
○軸の組み合わせ
どの地域(Where)にいる誰(for Whom)のどのようなニーズ(to meet What)を満たすのかを決めて初めて特定の市場セグメントを定義したことになる。
○セグメンテーションのチェックポイント
①セグメント内が同質
セグメント内の同質性が高ければ、特定のマーケティングミックスをつくるだけで効率的に潜在的な顧客グループに働きかけることができる。
②セグメント間が異質
③操作性
そのセグメントの市場規模が予想できるかどうか。そのセグメンテーションを行うことでマーケティングミックスの作り方に対して具体的な示唆が得られるか否かということ。
④セグメントの規模
○3つのアプローチ
①単一ターゲットアプローチ
単一の市場セグメントのみを対象にして、その市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。⇒ニッチャーの戦略
②複数ターゲットアプローチ
複数の市場セグメントを対象にして、それらの市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。すべてのセグメントをカバーする場合を特にフル・カバレッジと呼ぶ。フルカバレッジする製品ラインはフルラインとなる。⇒リーダーの戦略
③結合ターゲットアプローチ
一旦細分化をおこなった市場セグメントをいくつか同時に受け入れられるような「最大公約数的」なマーケティング・ミックスを構築するものである。
○ターゲットセグメントと4つのPのフィット
マーケティングの基本戦略⇒ターゲットセグメントにフィットするような4つのP(マーケティング・ミックス)を創りあげること。
【手順:下記①~③を繰り返す】
①セグメンテーション:売りたい製品のイメージを念頭においてセグメンテーションを行う
②ターゲット市場の選定:多様なセグメントの中からターゲットセグメントを選び出す
③マーケティングミックスの構築:選ばれたセグメントにフィットするようなマーケティングミックスを構成する。
・富士写真フィルム「チェキ」のケース
①ターゲット市場:女子高生から25歳くらいまでの女性
プリクラの大ヒット⇒「画像コミュニケーションのニーズ」がある。
日本国内(地理)・15歳~25歳(人口統計)・女性(人口統計)・画像コミュニケーション手段を多用する(行動)
②マーケティングミックス
・プロダクト:小型で持ち運びがしやすい、ネーミングが女子高生に愛される
・プライス:本体価格1万円、フィルムが10枚入りで700円
プリクラ(1回300円)を意識し、割安感が出るよう工夫
・プロモーション:イベントの実施⇒口コミと歩行者へのアピール
・プレイス:当初(プッシュ戦略)⇒通常のカメラ屋
後(プル戦略)⇒スーパーやコンビニ(開放型チャネル政策)
第3章 製品ライフサイクル
○製品ライフサイクルの段階的特長
導入期
成長期
成熟期
衰退期
売上高
低水準
急速上昇
緩慢な上昇or下降
下降
利益
僅少もしくはマイナス
最高水準
下降
低水準orゼロ
顧客
イノベーター/マニア
早期大衆追随者
後期大衆追随者
遅期追随者
競争
ほとんどなし
増加
企業数多数
減少
戦 略
上澄み価格戦略
浸透価格戦略
戦略の 焦点
市場の拡大
市場の拡大
自社ブランドの 浸透
シェアの防衛など
撤退のタイミングなど
戦略の 強調点
製品の認知
低価格化
ブランド選好
マーケットの地位別に異なる
選択肢多数
マーケティングミックス(4P‘s)
プロダクト
本質 サービス
本質 サービス
補助的サービス
マーケットの地位別に異なる
①撤退:タイミング
②展開:製品改良・用途拡大・市場開拓
③存続:残存者利益
プレイス
閉鎖型
開放型
開放型
プロモーション
プッシュ
プル
プル
プライス
高水準
低水準
低下
①導入期
戦略的な課題:市場の拡大⇒普及を妨げているボトルネックを明らかにし、それを除去する。
購買行動モデル:アイドマ(AIDMA)モデル
Attention(注意)⇒Interest(関心)⇒Desire(欲望)⇒Memory(記憶)⇒Action(行動)
・上澄み価格政策:初期のイノベーター(マニア)を相手に製品の開発費や初期のプロモーション費用など、さまざまな導入期のコストを回収してしまるような価格政策。
・浸透価格政策:思い切って原価われの価格を設定し、一気に市場を立ち上げるような価格政策
②成長期
競争相手への対応の仕方が最重要ポイント⇒自社ブランドを選好するように仕向ける
閉鎖型チャネルから開放型チャネル政策へ
プロモーションもプッシュ型からプル型へ
③成熟期
通常は10%くらいの成長率のところが高成長と緩慢な成長の分かれ目である。
自分の獲得した顧客は離れにくいように、相手の顧客はできるだけ浮気させるように
⇒ブランドロイヤルティを確立した上で他社の顧客を奪う。
成熟期のマーケティング戦略は市場における地位によって違う。
④衰退期
撤退・展開・存続の3つの選択肢がある
・撤退:タイミングのとり方が難しい
⇒8ミリの例:富士フィルムはかなり早いタイミングで撤退したが、後に残されたエルモやチノンなどは業績が大幅悪化。
・展開:技術革新か海外市場など新規市場開拓
一眼レフカメラ:ミノルタのα7000のオートフォーカスによって減少傾向にあった市場が一時的に上向いた。
ホンダの「スーパーカブ」:日本市場からインドネシアなどのアジア圏を市場開拓
・残存者利益:みんなが残ると悲惨
自社のみが残ると「おいしい」が、多くの会社が残存者利益を求めて撤退しないことを決めれば、悲惨な競争になりみなが儲からない。
【ライフサイクルの注意点】
①ライフサイクルは変則的である:S字型曲線をそのまま当てはめるだけの作業にはくれぐれも注意が必要。
②自己成就的予言が成り立つ製品ライフサイクル
○カップヌードルのケース
・「熱いお湯さえあればいつでもどこでも食べられる」新しい本質的サービスを提供する製品として登場
・1個100円の高価格
・プル型プロモーションによる開放型チャネル政策
・アメリカでは、プッシュ型
⇒個々の製品のライフサイクルが長くなるか短くなるか。これはあらかじめ決められたものではなく、マーケティングミックス戦略によってつくりだせるものである。
第4章 市場地位別のマーケティング戦略
市場地位別のマーケティング戦略は、主として成長後半から成熟期を通じてマーケティング戦略を考える上で有効な指針を提供する。
○市場地位別の分類法(コトラーの分類法)
シェア1位か? ⇒YES リーダー
↓ NO
攻撃的か? ⇒YES チャレンジャー
↓ NO
独自の生存領域を持っているか? ⇒YES ニッチャー
↓ NO
フォロワー
○トップシェアの魅力 ⇒ 市場シェアが大きいほど、企業にはさまざまなメリットが生じる
①シェルフスペースの確保
②生産コストのメリット
・規模の経済性
・経験効果:累積生産量が2倍になるごとに単位当たりのコストが一定割合で低下する。
③トップシェア3つの留意点
・シェア1位だから嫌いと言う人が必ずいる。⇒比較的簡単に流通させることができる地域だけを対象にしている方が利潤獲得という点では望ましい。
・シェアのトップメリットが永続しない場合もある。⇒技術の交代期には注意が必要
(イノベーションのジレンマ)
・規模の経済や経験効果を見るときには同時にシナジー効果を調べる必要がある。
○市場地位別マーケティング戦略の定石のまとめ
戦略の項目/市場地位
リーダー
チャレンジャー
ニッチャー
フォロワー
目標
・業界最大の利潤
・プレステージの維持
・トップシェアの奪取
・高利益率
・マイペースの成長
・安定した売上
・存続
・したたかな成長
戦略の基本方針
市場全体の拡大&スキをつくらない
差別化
先手必勝
生存空間全体の差別化
リーダー製品の安価な代替品を供給する
ターゲット市場の選択
フルカバレッジ
①セミ・フルカバレッジ&決定的セグメントに焦点
②セミ・フルカバレッジ&集中&機動的展開
①速すぎない成長セグメントの選択
②狭いセグメントへの集中
経済性セグメント
4P’s構築の基本方針
・イノベーション
・同質化
模倣されにくい差別化
狭いターゲットへのファイン・チューニング
徹底的なコストダウン
4P’sの定石
プロダクト
(製品ライン)
フルライン
セミ・フルライン
(主戦場で深いライン)
狭く深いライン
浅いライン
プロダクト
(本質サービス)
業界平均より高品位
-
独自性
トップブランドのワンランク落ち
プライス
若干高め
4つのPのいずれか、あるいはすべてで差別化
高め
低め
プロモーション
積極的
ターゲット・媒体を絞り込む
抑える
プレイス
より広いチャンネンル(開放型)
より狭いチャネル
低価格志向の流通チャネルに集中
○リーダーの戦略 ⇒ トップシェアと最大利潤の確保
・市場全体の拡大の方法
①新しいユーザーを獲得する。
②新しい用途を見つけ出す。
③1回当たりの使用量を増やす。
・シェア防衛の方法
①直接対決:マクドナルド対ロッテリアの例 ⇒ 利益体質を悪化させる場合が多いためいい手だとはいえない。
②嫌がらせ:納入業者に対するパワーハラスメント等
③スキをつくらない:フルカバレッジ、同質化
ライバル製品をスピーディーに追いかけて同質化することができれば、結局リーダーが有利になる。
④イノベーション
新製品の導入、新しい流通チャネルの開拓、ユニークなプロモーション等
・シェア拡大
○チャレンジャーの戦略 ⇒ 差別化によってリーダーを攻撃
差別化:できるだけ同質化されにくいものでなければならない。
①リーダーのもっていない経営資源を利用する。
②リーダーが同質化を行えない内部事情を利用する。
(例)資生堂と花王
ジョンソン&ジョンソンとライオン
(基本方針)
①主戦場を決めて資源の集中投入をする。(決定的なセグメントに集中する)
②ひとつのセグメントを次々と個別撃破しながら多数のセグメントで順次支配権を握っていく。
○ニッチャーの戦略 ⇒ 広い視野を持ちながら 単一セグメントに経営資源のすべてを集中投入する
(例)モスフードサービスの例
・駅前ではない2等立地に進出
・みそ、しょうゆをベースとした日本的な味付け
・業界全体の低価格競争には追随せず
日本ルナの例
○フォロワーの戦略 ⇒ 競争を回避し、ある程度利潤をあげながら経営資源を確保していく。
経済性セグメント:リーダーやチャレンジャーが魅力を感じない、価格に敏感な市場を選択
○アサヒビールと他ビール会社の例(ドライ戦争)
キリンの戦略:徹底的な同質化戦略をとるべきだった?
第Ⅱ部 より広い戦略的視点を求めて
第5章 業界の構造分析
〇ポーターの5つの競争要因
業界の美味しさ度の見分け方
(下記の項目に当てはまるものが多い場合は競争が厳しく美味しさ度は低い)
・ 既存企業間の敵対関係
同業者が多い、業界の成長が遅い、固定コスト、在庫コストが高い、製品差別化がない、買い手をスイッチする費用が少ない、供給能力を微増させられない、競争業者間の戦略が多様である、成功すれば成果が大きい、退出障壁が高い
・新規参入の脅威 ⇒新規参入が起こらないよう、ある程度製品価格を低くしておくなどの防衛策をとらないといけない。
既存企業による規模の経済の影響が少ない、製品の差別化の程度が低い、巨額の投資が必要とされない、供給業者をスイッチするコストが低い、流通チャネルを確保しやすい、規模とは無関係の不利はない、政府の政策(許認可、補助金)がない
・ 代替製品の脅威
コストパフォーマンスが急速に向上している、代替品業界の利益水準が高い
・ 買い手の競争力
買い手が集中している、自社製品が買い手のコスト要因となる、自社製品が標準品である、自社から他へスイッチするコストが低い、買い手の収益が低くコスト圧力が高い、供給される商品が重要ではない、買い手が充分な情報を持つ
・ 売り手の競争力
寡占が進んでいる、代替品が市存在しない、売り手にとって重要な業界ではない、売り手の製品は重要である、売り手の製品の代替は見つけにくい、後方統合をする意思と能力がある
第6章 全社戦略
第7章 事業とドメインの定義
終章 戦略的思考に向かって
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