書評: 1月 2009

2009年1月25日日曜日

ドラッガーさんが教えてくれた経営のウソとホント(2004 酒井綱一郎)


特に目新しさはなかったが、未来学者、社会生態学者としてのドラッカーさんの言葉をもとに、経営の観点をわかりやすく描いていた。
○イノベーションは 
・認識の変化を理解すること。認識を変化させることで革新は生まれる。
・常識にとらわれないこと、科学的変革を促すこと、それこそがイノベーション
・壮大なものではなく、身近なもの
・一人の人間のひらめきだけで生み出されるのではなく、何人もの人間がバトンを渡して走る駅伝型の発明のほうが、より成功例が多い。
・オーストリア出身のヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを「企業家による新結合」と呼んだ。また、「企業家とは秩序を破壊し解体するもの」と定義している。
・イノベーションを引き起こしたアイデアの90%は内部ではなく外からもたらされている。
○ホンダの三現主義(現場、現物、現実)
○インターネットの技術革新は、グーテンベルグクが発明した印刷技術によるコスト削減の比ではない。(ドラッカー)
○日本が世界市場で最も競争力を持っていた製造業は、もはや成長産業ではなく成熟産業である。(ドラッカー)
○「テクノロジスト」とは、高度な専門技術や技能、知識を有する知的労働者のこと。(ドラッカー)
「テクノロジスト」は昇進よりも自分の専門を愛し、金銭的な動機付けでは動かない人達である。
インターネットの時代は部下が上司を教える時代にある。
○人口減少にどう対処し、人口減少をチャンスに切り替えられるかどうかが重要。
○15歳から64歳までの生産年齢人口は1995年の8716万人をピークに減少
○知の創造を生み出すのに最も大事なことは「対話」である。(野中郁次郎)
○信頼、すなわち追随する人たちがいること、それ以外の共通点は、私が出会った名指導者にはいない。(ドラッカー)
○カリスマは害をもたらす存在でしかなく、リーダーシップはカリスマに依存するものではない。(ドラッカー)
○仕事を進めるうえで最も大切ににしたいことは「自分探し」の時間を持つこと

MBAが会社を滅ぼす~マネージャーの正しい育て方(2006 H・ミンツバーグ:訳池村千秋)



米国を中心にして行われている実際のマネジメントと切り離されて行われているフルタイムのMBAを痛烈に批判した本である。表紙には「MANAGERA NOT MBAs」とあり、帯には、業績不振の命国企業のエグゼクティブでMBA取得者の比率は90%、業績好調の米国企業のエグゼクティブでMBA取得者の比率は55%と書いてある。ミンツバーグはマネージメントは、「クラフト(=経験)」、「アート(=直感)」、「サイエンス(=分析)」の3つが適度にブレンドしたものでなくてはならないと説いている。特に、計算型マネジメントとヒーロー型のマネジメントが実務に弊害を及ぼすとし、関与型マネジメントが良いと断言している。関与型マネジメントとは、「オフィスで部下と触れ合い、専用のオフィスにあまり引きこもらない。データを読むだけで良しとせず直接の印象を大事にし、自分が話すより他人の話に耳を傾け、椅子にどっかり腰掛けるのではなく協力し合う。こうした態度をとることにより、部下に主導権を持たせることを目指す。」ことをいうのである。
 そこで、マネージャーの正しい育て方論は、以下の8つの定石として書いてある。
定石①マネジメント教育の対象は、現役マネージャーに限定すべきである。
定石②教室では、マネージャーの経験を活用すべきである。
定石③優れた理論は、マネージャーが自分の経験を理解するのに役立つ
定石④理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす。
定石⑤コンピテンシーの共有は、マネージャーの仕事への意識を高めさせる。
定石⑥教室での省察だけでなく、組織に対する影響からも学ぶべきである。
定石⑦以上すべてを経験に基く省察のプロセスに織り込むべきである。
定石⑧カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える。

 幸いなことに神戸大のMBAは、上記を実践しており、私自身もこの本に書いてあることは納得できる内容であると思う。

男道 清原和博

「男道 清原和博」を読んだ。面白かった。文章がすごくうまかった。ゴーストライターが、相当いい作家なんだろうと思った。
 内容的には、ジャイアンツへの子供っぽい憧れを終始抱いた野球人生をつづっていたが、能力が高いがうえに、本当に泥水をすすっても、野球をやる気概があれば、王さんを超えられたかもしれないなと思った。

 一方、清原以上に感動させられたのは仰木監督である。すばらしい人である。野茂、イチローを育てたことからわかるように、個性を伸ばすことに長けた人で、死ぬ間際まで、清原を誘い、最期は、花道をつくった人である。こういう人に憧れる自分がいることをあらためて感じた。

 一方、この本の内容を仕事におきなおすと、清原も、小学校から高校まで、死ぬほどつらい練習をしてきたのだと思うが、その時代があったこそ、41歳まで野球ができたのだと思う。そういう意味では、仕事でも寝食を忘れ、打ち込む時期があれば、成就するのだと感じさせる一冊であった。

2009年1月19日月曜日

金融大崩壊「アメリカ金融帝国」の終焉(2008 水野和夫)

水野さんの本は、Mr.円である榊原氏が絶賛していたことと、年末の朝まで生テレビでのコメントに興味を持ち購入した。
 内容は、我々素人にも、データを用いわかりやすく説明してあり、読みやすい本であった。
○今回の金融危機は行き過ぎた新自由主義経済の崩壊である。
○大きな物語「資本・国家・国民」の一体は終焉した。
○そのため100年に一度の未曾有の大危機であることも確かである。
○アメリカは5年分の消費を先食いしたので、5年間消費は低迷する。
○基軸通貨としてのドルは終わる。アメリカは景気の下支えとして総額1兆ドルを超える支出をする可能性がでてきており、莫大な国債を発行するその国債を買うのは中国・中東・日本である。
→円高が今後5年間は進む。
○資本の向かう先は30億人が近代化し中産階級を形成しつつあるBRIC’sなどである。
○資本の向かう先の2つめは、脱化石化エネルギー

上記から読み取れる投資方針は以下である。
■BRIC’sは成長する。
■脱化石化エネルギー産業は成長する。
■今後5年間は円高ドル安になる。

2009年1月12日月曜日

自助論(サミュエル・スマイルズ 訳:竹内 均)

「天は自ら助くる者を助く」は、自助論冒頭にある有名な格言だ。
この本全てが、この格言にあるような論調で、語られているのだが、その中でも特に心にしみいる言葉を以下に述べる。

①骨身を惜しまず学び働く以外に、自分をみがき、知性を向上させ、ビジネスを向上する道はない。
②むしろ必要こそが発明の母であり、困難こそが偉大な成果を生むための真の学校であるといえるだろう。
③われわれを助けるのは偶然の力ではなく、確固とした目標に向かってねばり動く勤勉に歩んでいこうとする姿勢なのだ。
④われは道を探す。道なくば道をつくる。
⑤意思の力さえあれば、人は自分の決めた通りの目標を果たし、自分がかくありたいと思った通りの人間になることができる。
⑥どんなビジネスにもそれを効率よく運営するのに欠かせない原則が六つある。それは、注意力、勤勉、正確さ、手際のよさ、時間厳守、そして迅速さである。
⑦人生で一番価値ある努力は、現在のちっぽけな満足に安住せず、将来もっとすばらしい機会を得ようと励むことである。
⑧願望だけでは何事も成就しない。その欲求に明確な目標を与え、それに向けて努力すべきなのだ。
⑨世界を動かし社会の指導的地位に立つのは、天分に恵まれた人間ではなく、目標に向かってたゆまず着実に努力する人間である。
⑩行動でも思考でも反復こそが力である。習慣は第2の天性なのだ。