書評

2010年2月20日土曜日

マーケティングを学ぶ (ちくま新書) (新書)



マーケティングの入門書として良書である。
マーケティング・マネジメントの定義として「企業が市場(生活者ならびに競争者)に向けて行うさまざまな活動、それらを総称してマーケティングと呼び、それらを統一した活動としてマネジすること
」としている。また、作ったものを売るのはセリング、売れるものをつくるのがマーケティングともいっており、さらに、マーケティング・マネジメントの概念として、生活者(消費者)志向、マーケティング諸活動の統合的管理、全社活動のマーケティング志向の下での統合を述べている。

第1部
 STPとはセグメンテーション、ポジショニング、ターゲットの3つで鍵となる考え方である。
この本の中ではさまざまなケースが述べられている。青芳製作所(スプーン)、アート引越しセンター、スカンジナビア航空、パナソニック(レッツノート)、伊藤園(緑茶)であるが、その中でスカンジナビア航空の例と伊藤園の例が参考になったので取り上げる。
■スカンジナビア航空~顧客満足を高め、競争に打ち勝つ~
 この中でCEOであるヤン・カールソンは「顧客を絞って価値を知る」という方針から顧客を「ビジネス旅客」に定めた。その中で、お客様に重要なサービスを定刻に到着することだと見定め「時間厳守キャンペーン」を行った。乗り継ぎ便が遅れても待たない。何かの事情で乗務員が遅れてもまたない。機内食の準備が戸となわなくても出発する。コンソリデーション(座席利用率が50%以下の場合、そのフライトを決行して、次の便に乗ってもらう制度)を廃止するなどである。
【学びたいこと】
 顧客層を細分化し(セグメンテーション)、自分が向き合う相手となる層を定め(ターゲティング)、その顧客にとって価値あるサービス提供を打ち出し、それぞれの業界で差別化された地位を獲得したことである。(ポジショニング)
 
■伊藤園
 伊藤園の例で学ぶことは「飲料化比率のコンセプトとセオリー」をつくり、緑茶市場の成長を信じたことである。飲料化比率とは緑茶全消費量のうち缶やペットボトルなどで消費される量の構成比である。この飲料化比率を緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒーの4種類の飲み物がそれぞれどの程度飲まれているのかを比較し、市場の拡大を信じたのである。
【学びたいこと】
 切り口(ポジショニング)先行で進むことで、緑茶飲料の長期的な市場戦略を見据えた事業のマネジメントが可能となったことである。
第2部
 市場適応の組織レベルとして、コーポレート、製品市場分野、商品ブランドの3つを述べている。花王でいうと花王がコーポレートブランドでありその下にはヘアケア、ボディケア、ビューティーケアなどの製品市場分野があり、その商品市場分野のしたにメリットやアジエンスなどの商品ブランドがそろう。
 この第2部では、ブランドを軸にした成長の対応方を述べている。ポジショニングによる成長とブランドの拡張による成長である。
■コーポレートブランドのマーケティングモデル
 コーポレートブランドのマーケティングモデルとして3つの特徴を述べている。
 ①メーカーは、チャンネルを維持するため広い製品ラインを持った。
 ②統制の利いたチャンネルをつくりあげたメーカーはそのチャンネルを養う義務がある。そのため新製品開発やモデルチェンジがチャンネル維持のため不可欠の施策としてマーケティングの中に埋め込まれている。
 ③商品ブランドより、コーポレートブランドの構築維持に注力する。メーカーのマーケティングの焦点は、流通チャンネルの協力を得ながら生活者に迫るやり方、つまり「プッシュマーケティング」を行う。
 
 コーポレートブランド戦略体制とは、チャンネルがあってこそのコーポレートブランドである。
  ①広い生産ラインと多数の製品ブランドの保有
  ②新製品導入サイクルの短縮化
  ③コーポレートブランドのアピール
■商品ブランド戦略
 コーポレートブランドと商品ブランドの違いを以下に示す。チャンネルという顧客視点を持たないメーカーは個々の商品ブランドを媒体とした生活者との関係作りに注力する。商品ブランドを持った企業は過度に新製品開発にこだわる必要はない。財産はブランド(商品名)であるので、それを壊さないことに注意しないといけない。
 「コーポレートブランド戦略」         ⇔ 「商品ブランド戦略」
 ・チャンネルを通じての顧客関係の構築 ⇔ ・商品ブランドを通じての顧客関係の構築
 ・広い製品ラインと多数のブランド  ⇔ ・選択と集中メガブランドづくり
 ・新製品の開発に注力  ⇔ ・顧客関係の維持に注力
 ・コーポレートブランドの拡張  ⇔ ・ポジショニング
■製品分野別に経営する。
 サッポロのドラフトワンの例で、製品分野の経営の難しさを述べている。
 サッポロは第3のビール市場を新たに創造したが、アサヒとキリンがこの市場に参入してきたことに対抗するために「スリムス」を導入した。その事情は、小売店の陳列棚から商品を撤去されたり、スペースを小さくされる棚落ちを防ぐためである。しかし、製品分野の市場地位を守りたいと考えたため、せっかくトップブランドとなった「ドラフトワン」の投資をしなかった。
【学びたいこと】
 どのタイミングで新ブランドを導入するかどうかの実際の判断は大変難しい。戦略立案者にとって怖いのは、「この道しかない」という視覚狭窄に陥ることでえある。

■ポジショニングを通じてブランドエクイティを確立する
 P&Gのファブリーズの例が紹介されている。日本では室内用消臭製品としては置き型が一般的であり、スプレーをかけるという習慣は馴染みのないものだったため、ライバル企業はP&Gに対し、どうして参入するのかといぶかしんだ。
一方、P&Gのブランドチームは大胆なマーケティング予算の投入を行った。周辺市場の獲得を視野に入れた措置だと考えられる。その考え方をまとめると。
 ①布の匂いを消すという分野でゆるぎない地位を獲得した。
 ②このニッチ市場の周辺には「室内消臭剤」と「室内芳香剤」というそれぞれが1000億円以上の規模を持つ、2つの大きな市場へ、ブランド拡張により進出した。
【学びたいこと】
 「ポジショニング」「コマーシャルイノベーション」「ブランドエクイティ」の3つ
 まず、生活者の頭の中に「布用消臭といえば、ファブリーズ」という評判を獲得した。すなわち「ポジショニング」を獲得したのであった。
 次に顧客との接点、コミュニケーションを「布のにおいをとる」から「部屋のにおいをとる」に変化させ、近隣市場に進出したのであった。コマーシャルイノベーションである。
 これらの結果、ブランドエクイティを市場の中に確固としたものとして構築
したといえるだとう。
今回の例はブランド拡張の成長例として述べてあったが、ルックJTBの例は、ブランド拡張の失敗例として述べてあった。
 ルックJTBは、第2ブランドとしてパレット、第3ブランドとしてナヴィというブランド体系を持っていた。そこで、JTBは、高級ツアーはルックJTBロイヤル、基幹商品はルックJTBレギュラー、廉価版はルックJTBスリムとルックのブランド拡張を行った。しかし、当初スリムのシェアを20%としていたが、結果35%のシェアにも達した。その結果、ルックJTBのブランド自体の価値が衰微しているといわれるようになった。このケースからブランド拡張に関するいくつかの課題が潜んでいることがわかる。
 ①市場においてそのポジションを安定して持続させることは難しい
 ②ブランド拡張にはコストとリスクが潜んでいること
 ③拡張した先の分野でその分野のメガブランドと競合することになる可能性が少なくないことである。
■ポジショニングの契機
 ①ある特定市場カテゴリとブランドの絆を強化する、すなわちポジショニングがブランドの長期存続にとって最重要課題である。
 ②ポジショニング活動を支えるマネジメント体制としてブランドマネージャー制があることである。
■ブランドエクイティ
 ブランドエクイティの定義
 ①生活者がこのブランドでなければならないというロイヤルティを持っているかどうか
 ②そのブランドから高い品質がイメージされるかどうか
 ③ブランドから質のよい連想が生まれているかどうか
ブランドエクイティの成長プラグラム
 ブランドにかかわる生活者市場を細分化して、それぞれの細分市場にアプローチする方法はブランドチームの定番の方法
■ブランドエクイティに基づいて企業を経営する
  ターゲットに向けて焦点の合った活動をとることが大切。ターゲットを絞り、ターゲットにとっての価値を闡明にし、その価値を提供できるよう徹底して業務プロセスを改革し、あるいはその価値に合わせて製品/価格/販売促進/流通ルートを統合する。
■ブランドの機能
 ①他との違いを識別すること
 ②信用供与
 ③ブランドが生み出す連想
■ブランドパワーを構成する要素
 ①再認率・・・生活者がそのブランドの名前を聞いて思い出せるかどうか
 ②再生率・・・競合ブランドの中で一番に思い出してもらえるかどうか
 ③情緒度
 ④購入意図
 ⑤満足度
創造的適応・・・自らの状況を創りつつ、その状況に適応する。
 
 

2009年12月27日日曜日

成功は一日で捨て去れ 柳井 正 (単行本 - 2009/10/15)


相変わらず、含蓄のある言葉が並んでいた。
前文には厳しい言葉が並んでいる。
「最近は、成功というものを取り違えている日が増えた気がする。本当はたいした成功ではないのに、自分が相当大きなことをやり遂げたような錯覚をしているのだ。これらは決して成功と呼ぶべきものではなく、むしろ成功という名の失敗をしたのではないだろうか。ちょっとした成功ならすぐ捨てるくらいの強い意思が必要だ。一番のお客さまそっちのけで、小さな成功だけで満足してはいけない。」
以下、気に止まった言葉を記述する。
○安定志向という病
 「現場・現物・現実」・・・本田のDNAと同じ言葉である。
 「即断・即決・即実行」
○会社を成長させようと思ったら、「現状満足」では絶対にだめで、現状を否定しつつ変えていかなければならない。そうするには経営者や幹部自身がまず、自分を変えようとしなければならないし、それができなければ会社は変わらない。
○日本企業最大の弱点は経営者
 経営者は組織の一番上にいて自分は仕事の指示だけして、問題がでたらしたの人が泥をかぶる。個々の仕事の目的や本質がわかっていないから、指示や命令も的外れなことが多く、伝えられた部下はしらけてしまう。判断力が乏しく、実務で人を動かして成果を出すということがあまりしていない経営者も多いのではないか。
○売値の決まり方と値引きの考え方
 実務能力の高いMDhodo、早め早めに売変処理をしていく傾向がある。もし、それで粗利益がとれなかったら、売れる商品を追加すればよいからだ。
○SPAの強みは「金の鉱脈」発見
 SPAは圧倒的な売れ筋を発見するまで、何度も何度もサイクルを自社でまわせる。
○成長は捨て去れ
 再強化、再成長の3つの成長エンジン・・・組織開発、立地・業態開発、商品開発
○大型店は販売効率が落ちる
 ユニクロの㎡あたり売り上げ高:88.5万円/年間・㎡(2008年8月期)
                     24.3万円/月・坪
○ドラッカーの名言
 「企業の目的として有効な定義はひとつしかない・すなわち、顧客の創造である。」
 「あらゆるものが、強みによって報酬を手にする。弱みによってではない、したがって、常に最初に問うべきは「われわれの強みは何か」である。」
 

2009年9月6日日曜日

わかりやすいマーケティング戦略 (有斐閣アルマ) (単行本(ソフトカバー))沼上 幹 (著)


平成18年3月20日

書名:マーケティング戦略
著者:沼上 幹
発行所:有斐閣アルマ

序章 イントロダクション
「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)
            ↓
「ルーチンの仕事はノンルーチン(創造的)な仕事を駆逐する」(計画のグレシャムの法則)

「戦略とは」⇒自分が将来達成したいと思うあるべき姿を描き、そのあるべき姿を達成するために自分の持っている経営資源(能力)と自分が適応するべき経営環境(周りの状況)とを関連づけた地図と計画(シナリオ)のようなもの
      ⇒市場に関して、市場を中心に捉えて、戦略的に思考すること
       【戦略的に思考するためのスタンス】
①大きく考えること
       ②未来を考えようとすること
       ③論理的に考えること(フィットしているかしていないか)

第Ⅰ部 マーケティング戦略
第1章 マーケティングミックス
【マーケティング・ミックス】
①製品(Product)
その製品が提供している本質的なサービスとその製品に付随している補助的なサービスがある。
【重要な点】
①本質サービスが顧客のニーズにフィットしているか否か
②本質サービスをより魅力的にするように補助的サービスがつくられているか。
○本質サービス
製品を物理的な特徴で捉えずその製品から顧客がどのような満足を引き出そうとしているかを考えることが重要。製品とはそこからさまざまな満足を引き出すことができるサービスの束だと考える必要がある。
○補助的サービス
 ブランド・おまけ・保証・メインテナンスサービスなど
【プロダクトミックス】
   ラインの幅(広い・狭い)とラインの奥行き(深い・浅い)からなる。
   あらゆるカテゴリーを捉えている場合は「フルライン」

②流通チャネル(Place)
 ・商取引の流れ⇒商流
 ・ものの輸送・保管の経路⇒物流・ロジティクス
○小売業と卸売業
 【重要な点】
 ①消費者と「出口」がフィットしているか否か
 ②その最終的な小売業者に達するまでに商売上どのような道筋をたどらせるのか
  ・一般論では最終的な商品を届ける範囲が広がれば広がるほど流通経路も長くなる
○チャネル政策
 閉鎖型チャネル政策
 開放型チャネル政策
○物流システム
 サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)

③プロモーション(Promotion)
 企業が顧客に情報を伝達する4つの手段
 ①広告・宣伝
  営業マンは単にモノを売っているだけではなく、企業と顧客との情報のやりとりを担っている考えなければならない。営業マンは行動によって企業イメージを顧客に伝え、顧客のニーズと自社の製品の問題点を企業に持ち帰って整理すると言う重要な機能を果たしている。
 ③広報活動
 ④販売促進
○プッシュとプル
 ・プッシュ戦略
   メーカーの営業マンが1次卸しや2次卸しに対して説得を行ったり、応援を行ったり、販売促進費などを使って様々な資金援助をして自社製品を顧客の側に押していく戦略である
 ・プル戦略
   大規模な広告を行ってまず最終消費者にブランドを認知させ、彼らが小売店に行って指名買いをするように仕向ける方法である。
④価格(Price)
 価格を決める際に目配りをすべき要因
 ①その製品のコスト
  規模の経済性・経験効果等留意
 ②競争相手が設定している価格
 ③顧客の財布の具合

【価格を安くしても良い場合】
①他企業が低価格に追随できないか
②価格を低くすることで市場が拡大して業界全体の市場規模が大きくなるか

○マーケティングミックス
 4Pのそれぞれが互いにフィットしている必要がある。
 ・ヨード卵「光」のケース
  「プロダクト」食品と薬の中間
  「プライス」高めの固定価格
  「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・商店街の八百屋さん
  「プロモーション」説明型(八百屋さん)プッシュ戦略と広報重視のプル戦略

 ・ルイヴィトンのケース
  「プロダクト」丈夫で長持ちする機能性バック
  「プライス」高いが地域毎に若干上下する。
  「プレイス」閉鎖型流通チャネル・・・直営または正規代理店
  「プロモーション」広告掲載はしない。ただし偽ブランドに対するしばしば批判広告は出す。店舗においても製品が直接手に取れないようになっている。
 
第2章 ターゲット市場の選定
 ○セグメントとセグメンテーション
  ・セグメンテーション(市場細分化)
マーケティングミックスに対して類似の反応を示すような同質的な市場部分に分解すること
   ⇒ある程度同質的なセグメントに分けることでより効率的効果的に働きかけることができるようになる。
 
 ・セグメンテーションの基準(軸とか次元)
   【地理的軸】
エリアマーケティングには次の2つの方法があるがどちらもかかしてはならない。
①その地域に住んでみて、その地域の内部者の視点を獲得する方法
②その地域の様々な特徴を統計などを用いて鳥瞰的に大きく捉える方法
【人口統計的(デモグラフィック)な軸】
 国勢調査で質問される項目
【心理的軸】【行動面の軸】
両者は区別しにくいが、前者が人間の本質的なタイプを示し、後者がそのタイプが行動として表れたものと考える。

○軸の組み合わせ
 どの地域(Where)にいる誰(for Whom)のどのようなニーズ(to meet What)を満たすのかを決めて初めて特定の市場セグメントを定義したことになる。

○セグメンテーションのチェックポイント
 ①セグメント内が同質
   セグメント内の同質性が高ければ、特定のマーケティングミックスをつくるだけで効率的に潜在的な顧客グループに働きかけることができる。
 ②セグメント間が異質
 ③操作性
   そのセグメントの市場規模が予想できるかどうか。そのセグメンテーションを行うことでマーケティングミックスの作り方に対して具体的な示唆が得られるか否かということ。
 ④セグメントの規模
 
○3つのアプローチ
 ①単一ターゲットアプローチ
   単一の市場セグメントのみを対象にして、その市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。⇒ニッチャーの戦略
 ②複数ターゲットアプローチ
複数の市場セグメントを対象にして、それらの市場セグメントにフィットしたマーケティング・ミックスを構築する。すべてのセグメントをカバーする場合を特にフル・カバレッジと呼ぶ。フルカバレッジする製品ラインはフルラインとなる。⇒リーダーの戦略
 ③結合ターゲットアプローチ
   一旦細分化をおこなった市場セグメントをいくつか同時に受け入れられるような「最大公約数的」なマーケティング・ミックスを構築するものである。

○ターゲットセグメントと4つのPのフィット
 マーケティングの基本戦略⇒ターゲットセグメントにフィットするような4つのP(マーケティング・ミックス)を創りあげること。
【手順:下記①~③を繰り返す】
①セグメンテーション:売りたい製品のイメージを念頭においてセグメンテーションを行う
②ターゲット市場の選定:多様なセグメントの中からターゲットセグメントを選び出す
③マーケティングミックスの構築:選ばれたセグメントにフィットするようなマーケティングミックスを構成する。
・富士写真フィルム「チェキ」のケース
 ①ターゲット市場:女子高生から25歳くらいまでの女性
  プリクラの大ヒット⇒「画像コミュニケーションのニーズ」がある。
  日本国内(地理)・15歳~25歳(人口統計)・女性(人口統計)・画像コミュニケーション手段を多用する(行動)
 ②マーケティングミックス
  ・プロダクト:小型で持ち運びがしやすい、ネーミングが女子高生に愛される
  ・プライス:本体価格1万円、フィルムが10枚入りで700円
        プリクラ(1回300円)を意識し、割安感が出るよう工夫
  ・プロモーション:イベントの実施⇒口コミと歩行者へのアピール
  ・プレイス:当初(プッシュ戦略)⇒通常のカメラ屋 
後(プル戦略)⇒スーパーやコンビニ(開放型チャネル政策)
   
第3章 製品ライフサイクル
○製品ライフサイクルの段階的特長 

導入期
成長期
成熟期
衰退期
売上高
低水準
急速上昇
緩慢な上昇or下降
下降
利益
僅少もしくはマイナス
最高水準
下降
低水準orゼロ
顧客
イノベーター/マニア
早期大衆追随者
後期大衆追随者
遅期追随者
競争
ほとんどなし
増加
企業数多数
減少
戦         略

上澄み価格戦略
浸透価格戦略

戦略の  焦点
市場の拡大
市場の拡大
自社ブランドの 浸透
シェアの防衛など
撤退のタイミングなど
戦略の  強調点
製品の認知
低価格化
ブランド選好
マーケットの地位別に異なる
選択肢多数
マーケティングミックス(4P‘s)
プロダクト
本質  サービス
本質  サービス
補助的サービス
マーケットの地位別に異なる
①撤退:タイミング
②展開:製品改良・用途拡大・市場開拓
③存続:残存者利益
プレイス
閉鎖型
開放型
開放型
プロモーション
プッシュ
プル
プル
プライス
高水準
低水準
低下

①導入期
 戦略的な課題:市場の拡大⇒普及を妨げているボトルネックを明らかにし、それを除去する。
 購買行動モデル:アイドマ(AIDMA)モデル
 Attention(注意)⇒Interest(関心)⇒Desire(欲望)⇒Memory(記憶)⇒Action(行動)
 ・上澄み価格政策:初期のイノベーター(マニア)を相手に製品の開発費や初期のプロモーション費用など、さまざまな導入期のコストを回収してしまるような価格政策。
 ・浸透価格政策:思い切って原価われの価格を設定し、一気に市場を立ち上げるような価格政策
②成長期
 競争相手への対応の仕方が最重要ポイント⇒自社ブランドを選好するように仕向ける
 閉鎖型チャネルから開放型チャネル政策へ
 プロモーションもプッシュ型からプル型へ
 
③成熟期
 通常は10%くらいの成長率のところが高成長と緩慢な成長の分かれ目である。
 自分の獲得した顧客は離れにくいように、相手の顧客はできるだけ浮気させるように
 ⇒ブランドロイヤルティを確立した上で他社の顧客を奪う。
 成熟期のマーケティング戦略は市場における地位によって違う。

④衰退期
 撤退・展開・存続の3つの選択肢がある
 ・撤退:タイミングのとり方が難しい
⇒8ミリの例:富士フィルムはかなり早いタイミングで撤退したが、後に残されたエルモやチノンなどは業績が大幅悪化。
 ・展開:技術革新か海外市場など新規市場開拓
     一眼レフカメラ:ミノルタのα7000のオートフォーカスによって減少傾向にあった市場が一時的に上向いた。
     ホンダの「スーパーカブ」:日本市場からインドネシアなどのアジア圏を市場開拓
 ・残存者利益:みんなが残ると悲惨
        自社のみが残ると「おいしい」が、多くの会社が残存者利益を求めて撤退しないことを決めれば、悲惨な競争になりみなが儲からない。
【ライフサイクルの注意点】
①ライフサイクルは変則的である:S字型曲線をそのまま当てはめるだけの作業にはくれぐれも注意が必要。
②自己成就的予言が成り立つ製品ライフサイクル

○カップヌードルのケース
        ・「熱いお湯さえあればいつでもどこでも食べられる」新しい本質的サービスを提供する製品として登場
        ・1個100円の高価格
        ・プル型プロモーションによる開放型チャネル政策
        ・アメリカでは、プッシュ型
       ⇒個々の製品のライフサイクルが長くなるか短くなるか。これはあらかじめ決められたものではなく、マーケティングミックス戦略によってつくりだせるものである。

        
第4章 市場地位別のマーケティング戦略
 市場地位別のマーケティング戦略は、主として成長後半から成熟期を通じてマーケティング戦略を考える上で有効な指針を提供する。

○市場地位別の分類法(コトラーの分類法)
 シェア1位か? ⇒YES リーダー
  ↓ NO
攻撃的か? ⇒YES チャレンジャー
  ↓ NO
独自の生存領域を持っているか? ⇒YES ニッチャー
  ↓ NO
フォロワー

○トップシェアの魅力 ⇒ 市場シェアが大きいほど、企業にはさまざまなメリットが生じる
 ①シェルフスペースの確保
 ②生産コストのメリット
  ・規模の経済性
  ・経験効果:累積生産量が2倍になるごとに単位当たりのコストが一定割合で低下する。
 ③トップシェア3つの留意点
  ・シェア1位だから嫌いと言う人が必ずいる。⇒比較的簡単に流通させることができる地域だけを対象にしている方が利潤獲得という点では望ましい。
  ・シェアのトップメリットが永続しない場合もある。⇒技術の交代期には注意が必要
(イノベーションのジレンマ)
  ・規模の経済や経験効果を見るときには同時にシナジー効果を調べる必要がある。

○市場地位別マーケティング戦略の定石のまとめ
戦略の項目/市場地位
リーダー
チャレンジャー
ニッチャー
フォロワー
目標
・業界最大の利潤
・プレステージの維持
・トップシェアの奪取
・高利益率
・マイペースの成長
・安定した売上
・存続
・したたかな成長
戦略の基本方針
市場全体の拡大&スキをつくらない
差別化
先手必勝
生存空間全体の差別化
リーダー製品の安価な代替品を供給する
ターゲット市場の選択
フルカバレッジ
①セミ・フルカバレッジ&決定的セグメントに焦点
②セミ・フルカバレッジ&集中&機動的展開
①速すぎない成長セグメントの選択
②狭いセグメントへの集中
経済性セグメント
4P’s構築の基本方針
・イノベーション
・同質化
模倣されにくい差別化
狭いターゲットへのファイン・チューニング
徹底的なコストダウン
4P’sの定石




プロダクト
(製品ライン)
フルライン
セミ・フルライン
(主戦場で深いライン)
狭く深いライン
浅いライン
プロダクト
(本質サービス)
業界平均より高品位

独自性
トップブランドのワンランク落ち
プライス
若干高め
4つのPのいずれか、あるいはすべてで差別化
高め
低め
プロモーション
積極的

ターゲット・媒体を絞り込む
抑える
プレイス
より広いチャンネンル(開放型)

より狭いチャネル
低価格志向の流通チャネルに集中




○リーダーの戦略 ⇒ トップシェアと最大利潤の確保
 
・市場全体の拡大の方法
  ①新しいユーザーを獲得する。
  ②新しい用途を見つけ出す。
  ③1回当たりの使用量を増やす。
 ・シェア防衛の方法
  ①直接対決:マクドナルド対ロッテリアの例 ⇒ 利益体質を悪化させる場合が多いためいい手だとはいえない。
  ②嫌がらせ:納入業者に対するパワーハラスメント等
  ③スキをつくらない:フルカバレッジ、同質化
            ライバル製品をスピーディーに追いかけて同質化することができれば、結局リーダーが有利になる。
  ④イノベーション
   新製品の導入、新しい流通チャネルの開拓、ユニークなプロモーション等
 ・シェア拡大
  
○チャレンジャーの戦略 ⇒ 差別化によってリーダーを攻撃
 差別化:できるだけ同質化されにくいものでなければならない。
 ①リーダーのもっていない経営資源を利用する。
 ②リーダーが同質化を行えない内部事情を利用する。
  (例)資生堂と花王
ジョンソン&ジョンソンとライオン

(基本方針)
 ①主戦場を決めて資源の集中投入をする。(決定的なセグメントに集中する)
 ②ひとつのセグメントを次々と個別撃破しながら多数のセグメントで順次支配権を握っていく。
○ニッチャーの戦略 ⇒ 広い視野を持ちながら 単一セグメントに経営資源のすべてを集中投入する
 (例)モスフードサービスの例
    ・駅前ではない2等立地に進出
    ・みそ、しょうゆをベースとした日本的な味付け
    ・業界全体の低価格競争には追随せず
   日本ルナの例
 
○フォロワーの戦略 ⇒ 競争を回避し、ある程度利潤をあげながら経営資源を確保していく。
 経済性セグメント:リーダーやチャレンジャーが魅力を感じない、価格に敏感な市場を選択

○アサヒビールと他ビール会社の例(ドライ戦争)
 キリンの戦略:徹底的な同質化戦略をとるべきだった?

第Ⅱ部 より広い戦略的視点を求めて
第5章 業界の構造分析
〇ポーターの5つの競争要因
 業界の美味しさ度の見分け方
(下記の項目に当てはまるものが多い場合は競争が厳しく美味しさ度は低い)
・ 既存企業間の敵対関係
同業者が多い、業界の成長が遅い、固定コスト、在庫コストが高い、製品差別化がない、買い手をスイッチする費用が少ない、供給能力を微増させられない、競争業者間の戦略が多様である、成功すれば成果が大きい、退出障壁が高い
・新規参入の脅威 ⇒新規参入が起こらないよう、ある程度製品価格を低くしておくなどの防衛策をとらないといけない。
     既存企業による規模の経済の影響が少ない、製品の差別化の程度が低い、巨額の投資が必要とされない、供給業者をスイッチするコストが低い、流通チャネルを確保しやすい、規模とは無関係の不利はない、政府の政策(許認可、補助金)がない
・ 代替製品の脅威
   コストパフォーマンスが急速に向上している、代替品業界の利益水準が高い
・ 買い手の競争力
   買い手が集中している、自社製品が買い手のコスト要因となる、自社製品が標準品である、自社から他へスイッチするコストが低い、買い手の収益が低くコスト圧力が高い、供給される商品が重要ではない、買い手が充分な情報を持つ
・ 売り手の競争力
   寡占が進んでいる、代替品が市存在しない、売り手にとって重要な業界ではない、売り手の製品は重要である、売り手の製品の代替は見つけにくい、後方統合をする意思と能力がある

第6章 全社戦略
第7章 事業とドメインの定義
終章  戦略的思考に向かって

事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位 (有斐閣アルマ) (単行本) 加護野 忠男 (著), 井上 達彦 (著)


平成16年5月12日
[事業システム戦略]
◎序章
〇差別化・・・2つの差別化
  ・製品・サービスによる差別化:目立つ、わかり易い、華々しい成功、模倣しやすい、持続時間が短い
  ・事業の仕組みの差別化:目立たない、分かり難い、目立たない成功、模倣しにくい、持続する
 〇事業システム博物学
・ 事業システムの違い
-百貨店とスーパー:百貨店-返品 スーパー-売り切り
    -衣料品の例-ベネトン、日本編物:生成り生産後染め売れ筋の色を見極めて染色
-ファミリ-レストラン-セントラルキッチン、アルバイト・パートの利用
-住居-弓場建設:土地所有者にマンションを建設してもらう。
    安いマンション建設-コンクリートの建物を通常の2割増しでつくる工法の開発(通常5割増し)
      そのためには人件費の削減が必要-例:タイルを切断することなしにタイルの大きさにトイレをあわせる
    -引越しサービス-アート引越しセンター:電話帳の一番上に来るように「アート」とした(もとは寺田運送)
                       顧客である主婦の立場に立ったきめ細かいサービス
                       -荷造りサービス、運送中の殺虫サービス
                        最近では家具インテリアのカタログ販売
-エアコンなどは引越しのその日に取り付けができる
・TSUTAYA-POSにより販売ピークを逃さない
         本部が品揃えと棚割りを決定
         セントラルバイイング
・ 事業システムの静かな革命
   事業システム革命の背景
・既存の事業システムの寿命、成熟化
・情報通信技術の進化
・新しい事業システムの成立が他の事業システムに変化をもたらす
      -宅配便という小口高速輸送による部品や最終製品をめぐる事業システムの革命
・新しい事業システムをつくらないと顧客へ価値が提供できない
      -ゲーム業界:おもしろいソフトを継続的に供給する仕組み
・ 情報ネットワークの意味:情報ネットワーク技術を使いこなしこれまで提供できなかった事業システムを競争相手が容易に模倣できないものとして提供する事が重要

◎1章:事業システムの設計パラメーター
 〇基本設計
・ 事業の幅と深さの決定
   事業の幅:自社が手がける事業分野の選択
        松下-家電製品を網羅
        ソニー-ホームエレクトロニクス
   事業の深さ:職能(開発、調達、製造、販売)部分の選択
・ 社外との間にどのような関係を築くか
   社外でその都最も良い条件を出してくれた相手と取引-市場取引
   社内の一部門で活動を行い社内で取引をする-社内取引
 〇事業の仕組みの詳細決定
・ 誰がどの仕事を分担するか
・ 人々を真剣に働かせるようにするためのインセンティブ・システムの設計
・ 仕事の整合化のための情報の流れの設計
・ 仕事の遂行に必要な金の流れの設計
 〇事業システムの評価基準
・ 顧客にとって大きな価値があるかどうか-有効性
・ 類似の価値を提供する他のシステムと比べ効率が良いか-効率性
・ 競争相手にどれくらい模倣が難しいか-模倣性
・ 長期にわたり持続できるか-持続性
・ 発展の可能性をどれくらい持っているか-発展性

◎2章:事業システムの設計思想
  〇事業コンセプト
   「どのような顧客に」「どのような価値を」「いかに提供するか」
  〇コンセプトを設計するための地図
戦略的3C
・顧客(Customer)への価値
・競争業者(Competitor)との差別化
・自社(Corporation)の技術、資源
  (・自社を補完する業者(Complementor)を合わせれば4C)
〇ポーターの5つの競争要因
 業界の美味しさ度の見分け方
(下記の項目に当てはまるものが多い場合は競争が厳しく美味しさ度は低い)
・ 既存企業間の敵対関係
同業者が多い、業界の成長が遅い、固定コスト、在庫コストが高い、製品差別化がない、買い手をスイッチする費用が少ない、供給能力を微増させられない、競争業者間の戦略が多様である、成功すれば成果が大きい、退出障壁が高い
・ 新規参入の脅威
     既存企業による規模の経済の影響が少ない、製品の差別化の程度が低い、巨額の投資が必要とされない、供給業者をスイッチするコストが低い、流通チャネルを確保しやすい、規模とは無関係の不利はない、政府の政策(許認可、補助金)がない
・ 代替製品の脅威
   コストパフォーマンスが急速に向上している、代替品業界の利益水準が高い
・ 買い手の競争力
   買い手が集中している、自社製品が買い手のコスト要因となる、自社製品が標準品である、自社から他へスイッチするコストが低い、買い手の収益が低くコスト圧力が高い、供給される商品が重要ではない、買い手が充分な情報を持つ
・ 売り手の競争力
   寡占が進んでいる、代替品が市存在しない、売り手にとって重要な業界ではない、売り手の製品は重要である、売り手の製品の代替は見つけにくい、後方統合をする意思と能力がある
 〇VRIO分析
・ 資源の価値(Value)
その資源・能力があれば、事業機会を逃さず、脅威にうまく対応できるのか
・ 希少性(Rarity)
競争相手のうち何社が、その価値ある資源・能力を既に保有しているのか
・ 模倣可能性(Imitability)
その資源を持ってない企業がその資源を獲得・開発しようとするとコスト面で不利が生じるのか
・ 組織(Organizations)
資源・能力を充分に引き出し、活用するように企業は組織されているのか
 〇事業コンセプトの実例
・ アスクル
顧客「誰に」:SOHO事業主→大企業という潜在顧客を掘り起こす
価値「何を」:翌日配送→大企業の間接費削減という価値を派生させる
工夫「いかに」:既存の販売チャンネル(文具店)の利用・オリジナル商品の開発
コンセプトと設計思想:SOHOの事業主を対象に、翌日配送というサービスを宅配便の物流ネットワークを前提に、既存の販売チャンネルの長所を生かしながら提供する事
基本原理:受注機能/販売機能/代金回収機能(リスク負担)の分解→アンバンドリングとリバンドリング
・ (伝統的な)スーパーマーケット
顧客「誰に」:価格に敏感な人=家計をやりくりする主婦の店
価値「何を」:良い品をドンドン安く=特売をかけてついで買いを起こさす
工夫「いかに」:セントラルバイイング=店舗を担保にして直営店を増やし売上げ面積を拡大する。その購買力をいかして本部が一括して商品を安くいれる。
コンセプトと設計思想:並外れた購買力を背景に、安く仕入れて安く提供すること
基本原理:規模の経済性=一括購買
・ コンビニ
顧客「誰に」:学生や単身生活者など=時間を問わず便利さを求める人々
価値「何を」:ライフ・コンビニエンス=必要な時に必要なものがすぐ手に入る
工夫「いかに」:高回転の仕組み=POSシステム、共同配送、ドミナント方式、地域の資本と労働力の利用=フランチャイズシステム、仮説検証支援システム
コンセプトと設計思想:ライフコンビニエンスを実現する店(30坪のスペースに3000品目を品揃え)を一定の密度で出店し、高回転の商品補充システムによって、必要な時に筆よなものが手に入るという価値を提供する
基本原理:速度の経済性(高速回転の仕組み)、外部化の経済性(フランチャイズ)、範囲の経済性(店舗網の多重利用)

〇事業コンセプトを設計するために
・ 顧客に注目する
進んだ要求を持っている顧客=リードユーザー
リードユーザーは平均7年も早く要求に気づいている(MITの研究)
自動車のアンチロックブレーキ:航空機メーカーの雨の中で時速200KMで走っていても滑らずに止まるブレーキが欲しいと言うニーズから生まれた
・ リードユーザー間のインタラクション
松下電器のレッツノート:パソコン通信によるフォーラムの声を自社の改善や開発に生かした先駆的な事例
・ リードユーザーの声を取り込む仕組む(=ユーザー起点型事業システム)
開発の実績では、既存の大企業にとっては自ら推進するほどの市場規模に達しない事が多い。
プチ袋(携帯用の女性の生理用品入れ):30代女性の提案により蝶理が商品化の権利を獲得し、ヒット作となった。携帯用の女性の生理用品入れ
・ 優れた仕組みの取り込み
ワールド:コンビニエンスストア、レンタルビデオチェーンのCCCの仕組みを取り入れて新しい事業システムを構築した
     業務サイクルを四半期から週単位へ(ベネトンやギャップも同様の考え方)
     店頭での売れ行きを逐次把握する事により、売れる商品をリアルタイムで分析しどの商品を打ち切るか追加して生産すべきかを検討する。(セブンイレブンの仮説検証のサイクルの考得方)
     成功の要因分析を行いそれらを組み合わせ新しい別の企画を行なうことがワールドの独自性を持たらしている。→ある色の素材が支持されているとわかれば、今度は別の素材を別のデザインの服にして市場に投入する。これらの作業を週単位で行なう(この作業のベースはカテゴリーマネージメントである。海外のある下着メーカーの手法を洗練して培ったもの)
     シーズンのピークにはヒット作が必ず店頭にあるように計画を組む(ピークにあわせるというのはTYUTAYAのコンセプトに由来)
・ 自社の資源に注目する
一点集中:日東電工:粘着テープ周辺に特化→第3章参照
 深い能力(技術ノウハウ)を蓄積
仕組みとして最先端の方法を探す→第5章
・ 事業コンセプトのリファイン
3つのC(顧客、競争相手、自社)について自問自答を繰り返しながら良い環境ですぐれた事業システムを構築しなければならない
・ 事業の定義の必要性
JR東海:鉄道業→輸送業:航空会社が競争相手に浮かんでくる
ヤマハ→楽器の製造→教育や娯楽:塾やファミコンが競争相手として浮かんでくる
事業コンセプトは再定義していくもの
      
◎3章:事業システムの設計原理
    基本原理:規模の経済、速度の経済、範囲の経済、集中化と外部化の経済
 〇規模の経済
・ 規模の経済の源泉
生産でのメリット:固定費を分散させる事ができる
         売上げ規模の割りに少ない在庫で対応できる
         投資規模を上回る製造能力を作りやすい
購買でのメリット:大口購買によるコストダウン
・ 規模の経済の問題
ある点を境に規模の不経済が生じる。組織が大きくなることによる管理コストの増大等
たくさんつくってたくさん売ることの難しさ―不良在庫の発生等
 〇範囲の経済
   情報やノウハウを手に入れるために投資をし、そこから発生する固定費を様々な製品やサービスに分散して回収
  シャネル:香水からそのブランド力によりバックや衣類などに展開
アートコーポレーション:引越し直後に必要になるものを販売(エアコン等)
丸井:消費者金融に進出―顧客が何を買っているかという異質な情報を利用できるため事故率が低い
宅配便:本の販売、通信販売の代金回収
・ 組み合わせがもたらす価値(メリット)
組み合わせによって顧客価値を高めることができる
ロジスティック・システムの効率的な利用を図ることができる
情報や知識の多重利用ができる
 (情報の性質)自然に蓄積される
        何度も使える
        同じ情報を集めても意味が無く、異質な情報から価値が見出される
異質な情報を総合する事によって判断の質を高める事ができる
 〇速度の経済
  スピードをあげることによって得られる便益の総称
・ スピードのメリット
顧客価値を向上させることができる
 スピードそのものが顧客価値を高める
アスクル:翌日配送サービス
フェデラルエクスプレスやヤマト:スピードで顧客価値を高めている
投資効率を向上させることができる
 情報を利用して在庫回転率を高めるという効果
  ファルマ:少ない在庫で売れ筋商品をうまく回転
売れ残りロスを削減することができる
  売れ残り商品を少なくするためにスピーディーに配送するという事業システムを構築
商品転換が容易である
 商品実験を行ないやすい
 新商品の導入が容易である
 〇集中化と外部化の経済
・ 集中化のメリット
 自力で生きていかなければならないという緊張感が生みだされる
 独自能力(コンピタンス)を確立し、強化する事ができる
 村田製作所:チタン酸バリウムをベースにしたセラミックコンデンサー周辺に事業を集中
 厳しい要求をもった顧客から情報を自然に集めることができる
 明確な事業コンセプトを共有し、それにこだわることができる
 仕事のスピードを高める事ができる
・ 外部化のメリット(集中化と表裏一体の関係)
 市場原理をうまく使うことができる
 専門家の力を利用することができる
 企業の伸縮自在性を高めることができる
仕事をする人の意欲を高める事ができる
・ 集中化と外部化の問題
 集中化の弱点
急激な構造変化に対し弱い→多角化戦略
    CDの普及によるレコード針の存在
リスク回避:環境を注意深く見守る
        集中化をしながら狭い範囲で広さを持たせる。キーエンスや日東電工
 顧客が限定される
  限定された顧客に依存すると自分たちのコンセプトと合わない仕事までさせられる
  ヤマト運輸の三越百貨店の例
  キーエンスは取引先が売上高の10%を超えないようにしている
 〇基本原理の歴史的移り変わり
  低コストから柔軟性へ(スケールメリットからフレキシビリティへ)
   コンビニの棚はこれまでにない速度で入れ替わっている
   ファッショントレンドも週単位で見なければ予想できない
   IT関連の電子部品や半導体にしても何をどれだけ生産すればいいか見極めは難しい
  →対策:外部化をすすめ柔軟性を保つ(規模の経済から外部化の経済へ)
       例:派遣社員の活用
      スピーディに対応することにより長期の予測を不要にする(規模の経済から速度の経済へ)
       例:PCメーカ―のはラインを廃止しセル生産を採用(旧型商品が滞留するのを防ぐため)
  硬い統合から柔らかな調整へ
   硬い統合とは、自社の担当範囲を広げて内部化すること
   柔らかな調整とは、自社の担当範囲を絞り込んで外部の会社やグループ会社を利用すること
  
◎4章:事業システムの理論的枠組み
 〇事業システムの制御
  内からの制御:性善説に立つX理論→アメとムチを用い外からきちっと制御し管理した方がいい
   人間:仕事が嫌い 命令や処罰がないと仕事ができない 野心が無く責任を持ちたがらない
  外からの制御:性悪説に立つY理論→内発的な動機付けを促したほうがいい
   人間:仕事と遊びは同じくらい大切 自分でたてた目標には積極的に取り組む 報酬があれば目標に向かって努力を惜しまず 条件次第で進んで責任をとろうとする
  操作性の高い要因に対する外からの制御→操作性の低い要因に対するうちからの制御
 〇事業システムの分析の方法
  社会学的方法:人や社会の問題としてとらえるための方法
  自然学的方法:客観的にデータを収集して解析する方法
  事業システムの骨組みの設計(社会学的方法)→肉付けの設計(自然学的方法)
 〇事業システムの4つのアプローチ 

社会学的方法
自然学的方法
外からの制御
経済学的制度分析
・ 取引コスト
・ 比較制度分析
工学的分析
・ 活動依存性分析
・ ロジスティックス分析
内からの制御
社会学的制度分析
・ 経営理念
・ 組織文化
認知心理学的分析
・ 情報処理
・ 意味の発見
・ 経済学的制度分析
 制度:ゲームのルール(独占禁止法や委託販売返品制度等)
 ルール:契約に代表されるフォーマルなものと社会規範に代表されるインフォーマルなものがある
 取引コストアプローチ:取引コストを算定すればどこまで内部化すればいいか一つの答えが出せる
 比較制度分析:多様な仕組みレベルでの差別化を実現するメカニズムを説明するのに役立つ
・ 社会学的制度分析
 自己組織的にルールがつくられる制度化のプロセス
  電車の中で若者が高齢者に席を譲る例
   若者が「譲り」 高齢者が「お礼を言う」これは社会的マナー
 上記のような社会的マナーなどインフォーマルルールを行動規範や慣行として具現化されたものが社会的制度である。
セコム:現状打破、独自性
エクセレントカンパニー(ピーターズとウォーターマン)では強い文化を持った企業が好業績をあげていると言う主張がある
組織文化:マネージメントしにくい=操作性が低い
・ 内からの制御の長所
 外からの制御ではなしえない制御を実現:自分たちが自発的に受け止めて作ったルールであるから
 制御の柔軟性:原則を柔軟に解釈し適切に行動する
・ 社会工学的制度設計
ポーターの活動システムのマッピング→競争が穏かでしゅうえきをあげやすいポジションをとることが戦略の本質
事業システムを活動部分を要素として切り分けモノのように客体化させて分析する手法
    設計構造マトリックス
     行と列にそれぞれ諸活動を位置付け相互に依存している部分に×を付けるもの
     →相互の依存性をいかに切り離し、モジュール化していくか(分業のためのルール作り)
・ 認知心理学的制度設計
認知心理学とは、情報処理アプローチに基いて人間の認知過程や知識構造について研究する、モデル志向的な実験心理学
 〇問題解決のための設計手順
  外からの制御→内からの制御 全体における関係→個別の要素 という流れで事業システムを設計
  コンセプト作り→事業システムの骨格→肉付け→実践
・ 事業の基本についての分析
コンセプト作り「誰に・何を・いかに提供するか」:自社の資源と能力を確かめる必要がある
                       マーケティング論 資源ベース戦略論
    事業の定義→誰が競争相手かが決まる:事業ドメイン論やポーターの戦略論
    収益の構造:規模の経済、範囲の経済 速度の経済 集中化外部化の経済のうちどの経済を追求すべきか
・ 事業システムの骨組みの分析
自社の担当範囲の決定→範囲の経済ならば事業範囲を広げ、速度の経済なら深さをとり、集中化・外部化の経済なら幅も深さも狭める:取引コストアプローチ モジュール化
・ 事業システムの肉付けの設計
活動システムや構造的マトリックスを検討
インセンティブについてはフランチャイズ制
情報については実験計画法
モノ・カネについては掛け算足算化
・ 事業システムを実際に構築する行程表
事業システムを実行に移す

◎5章:事業システムの経済分析
 〇取引コストアプローチ:外部との取引に関るコストが問題となる
   取引コスト
・ 取引先を探すのにかかる探索費用
・ お互いに情報交換して取引を成立させるための交渉費用
・ 合意したとおりに取引が行なわれたかチェックする監視費用
・ 関係特殊的な投資に由来する費用
 取引コストが高ければ「内部」 取引コストが安ければ「外部」 またはその「中間的組織」
  内部化のデメリット
・ 十分なスケールメリットを追求しにくくなる
・ 内部化した部門が十分な知識を蓄えられず最適なサービスを受けられないかもしれない
・ 組織内の一部門にすることによって管理コストが高くなる
・ 取引が安定しすぎて競争原理が働かなくなる
解決例
・コンビニエンスストア
 ベンダ―を2社年競争させる(二社調達)⇔スケールメリットを犠牲
・取引の容の実際
社内取引
石川播磨島工業(技能者の内部化):ジェットエンジンの開発の鍵は高精度化と軽量化
         内部に職人のピラミッドをつくりそのデータをNC機(数値制御機)に数値化する
市場取引
中間的なかたち
松下電器:社内から部品を調達するが「忌避宣言権」があり、社外へ取引を切り替えることができる
芸者の置屋制度:料亭に属してしまうと芸を磨こうとする真剣さがなくなるため置屋に所属
相撲の部屋制度も内部の競争制度を取り入れている
 〇ゲームアプローチ
  価値の創造と分配にかかわるもの
・ 関係の継続性
囚人のジレンマ→繰り返しゲームになるとしっぺがえし戦略が有効
   継続関係のメリット
    相手を裏切ろうとするインセンティブが生じにくい
    信頼関係をきづきやすい
    お互いを良く知ることになる
・ 価値の創造と配分
 〇比較制度分析アプローチ
  システム設計の補完性と多様性にかかわるもの
・ 一つのシステム内の補完性とシステム戦略の補完性を前提
・ システムが安定するための均衡が複数あることが想定されとおりシステムの多様性を認めている
・ システムの進化は過去の経験によって制約されており経路依存的であると考える
・ ある均衡から別の均衡への移行は革命的におこなわれるより暫定的に行なわれるべきだと考える
・ 制度の補完性
   「オープン且つ密接な関係」「クローズ且つ多数の競争」はともに望ましい関係 
・ システムの多様性
アパレル業界:ユニクロ―規模の経済性 ワールド―速度の経済性
家庭用ゲーム機器業界:任天堂―ソフト会社を厳しく選定し内容を管理しながら開発
           ソニー―幅広くソフト会社に呼びかけ思い切ったソフト開発を奨励する

◎6章:事業システムの社会的分析
 〇理念の役割
  例:松下電器:水道哲学―万人に水のごとく安く豊富に製品を供給する
         産業報国―金儲けのためではなく社会生活の改善を目指し世界文化の発展に寄与すべき
 共存共栄―顧客はもちろん競争相手に迷惑をかけてはならない
・ 人々を動機付け理念的なインセンティブを与える
・ 判断基準を与える
・ コミュニケーションのベースとなる
 ・インクスの理念
  金型メーカーであるインクスの理念
・ 日本の金型産業に対する貢献
・ 労働市場における雇用の確保
携帯電話の金型は通常45日であるがインクスは5日
(理由)3次元CADの導入で技能者の養成期間が素人でできるようになった
    →人事システムがユニーク 80%は3ヶ月で辞めるが問題の無い仕組み作り
     コアメンバーは情報システム設計・開発や経営管理に専念
・ 収益性と社会性の両立
コープ神戸:収益性と社会性の両立をあきらめ、社会性が求められる時は社会性に関る理念を上手く引き出し、収益性が求められるときはそちらにシフトすることで成功
 〇組織文化
  
◎ 7章
◎ 8章
◎ 9章
◎ 10章

MBA経営戦略 (単行本) グロービスマネジメントインスティテュート (編集)


◎→〇→●→・ 項目については左記の順で示す。
平成16年5月5日
[MBA経営戦略(グロービス編)]

◎戦略策定の要件
 〇全社戦略
  どのような事業で戦うのか
 〇事業の定義
・ どのような顧客層の
・ どのようなニーズに向けて
・ どのような技術に基づく商品、サービスを展開するのか
 〇事業ポートフォリオ
・ ドメイン(事業領域)の決定
・ 事業ポートフォリオバランスを図ること
 〇多角化によるシナジー効果、範囲の経済性(事業間の共有コストの削減)
 〇経営理念→ビジョン→戦略(ストラテジー)
 〇戦略策定の基本プロセスと要素
・ 第1ステップ:外部分析と内部分析
3C分析:市場分析(Customer)、自社分析(Company)、競合分析(Competitor)
         市場分析及び競合分析が外部分析に当たり、自社分析が内部分析に当たる
    ※補完企業(Complementor)を含めると4C
・ 第2ステップ:代替案創出のための詳細分析
状況の認識と検証されるべき仮説の作成
・経済性分析に関する定量的把握
・マーケティング上のメリットとデメリット
・意思決定後のシナリオ読みとリスクに関する判断
    コンティジェンシー・プラン(最悪の状況の対処法)の作成
◎全社戦略
 〇経営理念、ビジョン、ミッション
  経営理念、ビジョン、ミッションの役割
・企業の構成員の意欲を掻き立てる夢として機能する
・企業の構成員の行動規範をつくる
・事業における成功の鍵を明らかにする
  経営理念の浸透、強化方法
・ 事業を成功させることによる理念の徹底
ソニーの設立趣意書にある「他社のやらない技術で消費者の豊かな生活に寄与する製品を作り出すこと」というミッションを製品の成功による「成功の好循環」(グッドサイクル)により浸透
・ 公のメディアの利用
ソニーは上記の他に世界的注目度が高いことを利用し、メディア上でソニースピリッツを報道してもらった
・ 綱領や社歌の唱和、社内での訓話、社内報などの利用
松下電器での方法
 〇ドメイン(事業領域の決定)
   ドメインを決定する際には、顧客軸(市場軸)、技術軸(製品軸)に加え顧客に果たす機能(機能軸)によって定義する。
   ドメインは時とともに変化するので拡大・修正していくことが必要
JR西日本:鉄道から総合サービス企業へ
 〇コア・コンピタンス
   コア・コンピタンスの定義:顧客に対し、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力(リソース・ベースド・ビュー:資源に基く戦略の見方)
  ・物流ネットワーク:ウォルマート→自前の倉庫群、物流網、情報システム網により「エブリデイロープライスを実現」
・事業に関する共通の価値観:ヒューレットパッカード→「HPウェイ」によりベンチャースピリットを失わず、闊達に行動する人材を活用する組織を作り上げている。
・ブランド:ナイキ
・新しい生産方式、流通方式:デルコンピューター→直販方式
 〇全社戦略とリーダーシップ
・リーダーの役割
 夢のあるビジョンの提示
 上記が実現可能であることを検証し、明示する
 組織の中でビジョンが実現されるように働きかける
 〇事業ポートフォリオ
  ・PPM(プロダクトポートフォリオマネージメント:BCGのポートフォリオ)
 「成長性が低い市場か否か」「マーケットシェアが高いか否か」から事業を以下の4つの象限に分類→ライフサイクルとマーケットシェアの価値が議論のポイントとなる
 象限の境目(軸の中央)
 市場成長率(縦軸):アメリカでは普通ROE10%とすることが多いが、日本では5%又はGNP成長率で区切る場合が多い
 相対市場シェア(横軸):1.0(倍)
 各象限の意味
  花形製品(Star):成長期の事業シェアが高く競争力があり会計上の利益はでるが、運転資金や設備投資によりキャッシュフローの観点では、大幅な資金創出は見込めない
  金のなる木(Cash Cow):成長性は次第に落ちていくがシェア、利益が高いうえ成長のための投資がそれほどかからないため潤沢なキャッシュフローが得られる。
  問題児(Question Mark又はPloblem Child):
市場が成長期にあるが自社のシェアが低い事業であり、一般的には収益性も低い。花形製品事業にするか負け犬事業にするかは、選択と集中により自社の財務状況に合わせた事業の絞込みが必要。
  負け犬(Dog):潔く撤退すべき事業。成長性の低い時期にシェアを増やすのは困難であるから。
 シェアの定義の重要性
   シェアの定義をする時は、全体市場で出すのか、セグメント別や国別シェアで出すのか、さらに、数量ベースでだすのか売上高ベースでだすのか。
 シェアの考え方
  トップ企業の場合:2位企業との市場占有率に対する自社の市場占有率の比率
  2位以下の企業の場合:トップ企業の市場占有率に対する自社の市場占有率の比率
  (例)1位:A社40% 2位:B社20% 3位:C社10%の場合
     A社:2.0倍 B社:0.5倍 C社:0.25倍
 円の面積の考え方
  円の面積が売上高(数量)に比例するようにする
  (例)A事業40億 B事業20億 C事業10億の場合
     A事業の半径:2.0cm B事業の半径:1.4cm C事業の半径:1cm
・GEのポートフォリオ
  「業界の魅力度」「事業単位の地位(自社の強み)」から9つの象限に分けている。弱点としては、評価に内部のデータを使うため他社との比較が困難、指標の取り方が主観的で信頼性にかけるなどがある。(主観的に指標をとるため経営者の意思が反映される)
軸の考え方
「業界の魅力度」:市場規模、市場成長率、産業の収益性、循環性、インフレへの対応、非アメリカ市場の重要性などから判断
「事業単位の地位(自社の強み)」:市場における地位(市場シェア)、競走上の優位、相対的収益率から判断
 〇事業拡大マトリックス
・ アンゾフのマトリックス(製品・市場マトリックス)
水平軸→新製品の展開:「何を提供するか」(Market、Customer)を変える
垂直軸→新市場の展開:「どこで戦うか」(Product)を変える
・ アーカーのマトリックス
アンゾフのマトリックスに加え第3軸にビジネス・システムの変更により成長方向を付け加えた:「どのように事業をするか」(Business System)を変える
〇成長の復讐と経営の再生
  過去の成功体験が次の成功を阻む

◎事業戦略
日本旅行の企画商品戦略→マス・マーケティング戦略
 今後は、セグメント・マーケティングをどのように行なっていくかが課題
 セグメント・マーケティングにより商品のラインナップを揃えていく際に規模の経済性を生かすことを考える必要がある。
[自動車メーカ-のトヨタの例]
 戦後:フォード生産方式によりマスマーケティング戦略を行なってきたが、GMのマーケティングを学びセグメント・マーケティングを行なって、顧客セグメント別にラインナップを揃えた。
→セグメント・マーケティングを行なうためにはラインナップを維持するために消耗戦を招きやすい。
SWOT分析
Strengths,Weakness,Opotunities,threats

〇競争戦略策定のためのフレームワーク
外部環境分析(業界分析):市場機会と脅威の発見
内部分析:自社の強気・弱気分析
バリューチェーンと事業変革
〇外部分析
●5つの力
   旅行業界の前提
    (業界内での競合企業)
      総合旅行会社としては、JTB、KNT、TKKの4社であるが、各セグメント毎に様々な競合企業が存在する。
    (新規参入者)
参入障壁が低いため、あらゆる業界から参入してくるが、団体販売から企画商品(パック旅行)やJR券・航空券などの単品類を扱っている「総合旅行」への参入はいくつかの制約があり難しく、新規参入者は一セグメントのみに参入する場合が多い。
・ 海外格安航空券:HIS
・ ビジネスホテル:旅の窓口
・ 出張手配:ハウスエージェント
・ リテーラー:流通系旅行会社
    (代替製品・サービス)
旅行は趣味娯楽の一種であり嗜好性の商品である。よって、旅行の代替えとしては、範囲は広く、プラズマビジョン、DVD、PCなどの電化製品から、PSなどのゲーム及び映画や音楽鑑賞などの趣味が考えられる。
     (売り手の交渉力)
      旅行会社のサプライヤーとしては、ホテル旅館などの宿泊施設や鉄道・航空機などの運輸機関などがあるが、旅行会社は、全国的な販売網を持たない旅館・ホテルについては強い交渉力はなく、旅行会社のほうが強い交渉力を持っていた。しかしながら、キャリア等の運輸機関については、外資系航空会社を除いては、JR・国内航空3社を見ても寡占状況であり、全体的にみると旅行会社の交渉力は強い。しかしながら、ホテルなどの宿泊施設についても系列化が進んでいるほか、インターネットなどの販売チャンネルが多様化しており、年々交渉力は強くなってきている。
     (買い手交渉力)
      競合が激しい事から旅行業における買い手競争力は非常に強く、値引きなどを行なう場合が多くなってきてる。

●アドバンテージマトリックス
   ・規模型事業(競争上の戦略変数少、優位性構築の可能性大)
     規模が大きい(シェアが高い)ほど高収益となる。
    →製品が単純で、差別化要因が少なく、しかも開発面、生産面、マーケティング面などで規模が効く場合にこの傾向は顕著になる。(成長期の素材や鉄鋼、自動車)
   ・特化型事業(競争上の戦略変数大、優位性構築の可能性大)
     規模が大きくても市場セグメンテーションを通じて異なる戦略がとれる場合は特化型事業となる。(分野毎に強いメーカーがいる場合:医薬品業界、計測機業界)特化するための主要な競争要因は2~5個の場合が多い。→旅行会社はこの業界か?
   ・分散型事業
     事実上大企業のいない業界:蕎麦屋やすし屋、アパレル→店舗経営者の資質が成功の鍵を握る
   ・手詰まり型事業
     構造不況業種→規模型事業からコスト格差がでなくなった鉄鋼業界など。
・業界構造の変化
    分散型→規模型→特化型
           →手詰まり型
    日本旅行は規模型からの変革を求められている。
〇内部分析
● バリューチェーン(付加価値連鎖):業界分析で成功要因を発見する場合に役立つ
支援活動:全般管理(インフラストラクチャー)・人事労務管理・研究開発・調達
主活動:購買物流・製造・出荷物流・販売マーケティング・サービス
● コスト推進要因(コストドライバー)
コストの振る舞い(コストビヘービア)に着目
→コストビヘービア分析(営業コスト分析、生産コスト分析、彼我分析(他社比較)等)
● BCGのバリューチェーンの再構築
・バリューチェーンの中でコストの割りに価値が低いところはどこか
・自社の事業は顧客バリューチェーンの一部か全部か
・自社の事業でネットワーク化によって影響を受けるのはどこか
・現在の戦略的資産のうち負債となるものはどれか
・どのような新しい活動、能力が必要になるか
● BCGのバリューチェーンの再構築からみたビジネスを創出するパターン
・一つの要素で支配的地位を確立する(レイヤーマスター)
強力なバイイングパワー:家電量販店:
特化型部品:キーエンス、ローム
・バリューチェーン全体のプロドユーサーになる(オーケストレーター)
部品メーカーの組織化・業務アウトソーシング:デル
顧客の購買代理店:ミスミ
・既存のチャンネルの弱みや欠陥をついて新市場を開拓する(マーケットメーカー)
リクルート:週間住宅情報(不動産屋に行かずに物件を選ぶことのできる市場を開拓)
オークネット:中古車映像の配信により広範囲で活発な取引を可能とした
・ナビゲーターになる(パーソナルエージェント)
ネット上の無数の情報を整理してくれるナビゲーターが購買代理店として必要となる。
〇戦略の基本パターン
 以下の戦略については、既存の事業を高い視点から見て再評価したり、うまくいかない原因を探り出すツールといして用いることが適切であり、事業戦略の詳細を決めるものではない
● ポーターの3つの基本戦略:競争優位を築く基本戦略
横軸で競争優位の源泉を低コストと差別化縦軸で競争の範囲を広いターゲットと狭いターゲットで区切り基本戦略を定めている。この戦略は、競合企業との比較の中で使用する。また、日本の優良メーカーはこれらの戦略を複数併せ持つ場合が多い。(キャノンは、技術力で差別化しながらコストリーダーシップをとっている)
・コスト面で優位に立つ→コストリーダーシップ戦略
    T型フォード、カシオ計算機、EOS1000
    →リスクは製品の陳腐化が挙げられる。
・差別化する→差別化戦略
    モスバーガー、ベンツ、スイスの高級腕時計などのブランド力
   →特異なポジションを獲得して高価格を実現する事。但し、マーケットシェアは特別高くない
・特定の領域に集中する(コスト集中、差別化集中)→集中戦略
    アドバンテージマトリックスの特化型事業と同じコンセプト(但しポーターは差別化と集中化は別の概念だとしている)
    特殊分野への集中:放送用音響機器、自動車用ステレオ
    地域への特化:地方銀行
    チャンネルへの特化:美容室でのシャンプー販売、通販用製品
● コトラーの競争上の地位とパターン
・リーダーの戦略→マーケットシェアの拡大若しくは維持
・チャレンジャーの戦略→シェアを奪う標的を定めシェアアップを挑む
・フォロワーの戦略→競合企業から反撃をうまない程度に経営成果を最大(コストを最小減にし利益を最大にする)にする戦略
・ニッチャー戦略→特化戦略(特定需要特化、垂直レベルでの特化、特定顧客向け特化、特定地域特化、特定製品特化、特定品質・価格特化、サービス特化等)

ハンバーガー:マクドナルド(リーダー)、モス(ニッチャー)、その他(フォロワー)
旅行業界:JTB(リーダー)、日旅・東急(フォロワー)、近ツー(チャレンジャー)、HIS・旅窓・阪急(ニッチャー)

● 事業のライフサイクルと戦略パターン
〇プロダクトライフサイクル:ライフサイクルに応じた市場の要請の変化を読み取る
 市場導入期:市場拡大
 成長期:市場浸透
 成熟期:シェア維持→競争が激化する中で、差別化戦略や価格戦略など明確な戦略が必要となる。
〇BCGダイヤモンド:事業のライフサイクルを経営戦略に重点をおいて表現したフレームワーク
 創造期:アイデアが多数でてきて、その一部が事業として確立される時期
 成長期:規模の拡大に応じマネージメントのノウハウをレベルアップさせる必要がある。創業に成功したオーナー企業の多くがこの段階で躓く。
 優位性確立期:成長に伴い、事業戦略はますます重要になってくる。競合上の優位性が構築されない限り市場の成熟に伴う競争激化により敗退していく。
 効率性追求期:ひとたび競争優位が確立できれば効率性を追求していく必要がある。この段階で培われる企業風土は。組織の硬直性、官僚化を伴う例が多く、環境変化が最大の脅威となる。→まさに日本旅行はこの状態である。

◎戦略的経営
〇ゼネラルマネージャーの役割
・戦略の策定
ミッション・長期ビジョンの理解→環境分析(内部分析、外部分析)→戦略目的の設定→戦略代替案の策定→最善の選択肢の決定→実行計画への落とし込み
・資源の動員と配分
戦略実行のための予算と人員の確保
・人材開発(人の採用、育成、解雇)
戦略の目的に従い人を採用、育成、解雇する
・組織作り
「組織形態は戦略に従う」といわれるように、戦略に従い組織を変更していく
・企業文化の形成(職場環境)
戦略を促進するような職場の意識や行動規範を形成していくことである。
・オペレーションの監督
日々の業務の進捗状況、成果の把握
 〇マネージメントサイクル
  管理サイクル、PDCAサイクル、PDSサイクル
   目標設定→実行→測定→評価→対策→目標設定
 〇ストラテジックプランニング
・ 企業全体の目標の伝達
・ 目標設定のプロセス
・ 本社における環境精査
・ マネージャーの焦点
・ 本社プランナーの役割
・ 計画と予算のリンク

場合分け
小企業
大企業
スタート時
年月を経た場合
企業全体の目標の伝達
明示的ではない
明示的ではない
明示的
目標設定のプロセス
トップダウン
ボトムアップ
交渉ベース
本社における環境精査
内容に入る
数値ベース
数値ベース
マネージャーの焦点
財務的
財務的
戦略的
本社プランナーの役割
分析者
触媒
調整者
計画と予算のリンク
緊密
ゆるい
緊密

〇組織を分析するフレームワーク
・ マッキンゼー7つのS
(3つのハードのS)
・Strategy(戦略)
会社の持続性のある競争優位の源泉は何か
会社にとっての戦略上の優先事項は何か
・Structure(組織)
基本的な組織形態はどうあるべきか
組織の集権(分権)の度合いは
組織の部門間の地位やパワーはどうなっているか
・System(社内の仕組み)
組織には必要な仕組みが備わっているか
経営陣が一番重視し利用しているマネージメントシステムは何か
(4つのソフトのS)
・Staff(人材)
採用と育成のやり方は
経営陣の特性は
どの部門に最も強いリーダーがいるか。弱い部門はどこか
・Skills(スキル)
会社が最も得意とする付加価値活動は何か
将来戦うために必要な新たなケーパビリティ(組織としての能力)は何か
何を捨てる(アンラーニング)ことが必要か
・Style(経営スタイル)
トップの意思決定のスタイルは(ボトムアップ対トップダウン、分析対経験、勘)
マネージャーの時間の使い方は(どこにいてどんな風に管理しているか)
・Shared Values(価値観)
企業の存在意義に関する共通認識はあるか
企業のビジョンはどうか
経営陣の関心のあり方は(短期対長期、社内対社外)
社員は自社の特徴をどう表現しているか
 〇変革のマネージメント
  変革のポイント
・トップの本気を知らしめる
・本年の議論を沸き起こす
・無制限の発想(ゼロベースの発想)を行なう
〇企業の経営成果を測る指標
5つの財務指標
ROE(自己資本純利益率)
 ROE=当期純利益/自己資本
ROA(総資産利益率=部門別に計算する際はROIとも呼ぶ)
 ROA=経常利益/総資産、若しくは=金利支払前経常利益/総資産
ROCE(使用資本利益率:Return on Capital Employed)
 ROCE=[支払い利息(1-t)+当期利益]/[有利子負債+自己資本]
 t=実行税率
EVA(経済的付加価値)
 EVAn=NOPATn-C*×Capitaln-1
EVAn:n年度のEVA
NOPATn(Net Operating Profit After Tax):n年度の営業利益×(1-実行税率)C*:資本コスト(WACCと同じ)
Capitaln-1:n年度の期初(つまりn-1年度末)のネット資産に投下されたキャッシュの総額で次の通りCapitaln-1=Σ(n-1)It I=(投資―減価償却)±運転資本の変化
IRR(内部収益率:Internal Rate of Return)
 CF0+=Σ(n)[CFt×(1/(1+r)t)]=0となるときr=IRR 
 r:ディスカウントキャッシュレート(割引率)
 CFt:t年度のキャッシュフロー
CFROI(投資資本キャッシュフロー比率)
 CFROI=キャッシュフロー/投資資本
 キャッシュフロー:フリーキャッシュフローを利用する場合と営業キャッシュフローを利用する場合があるが、前者では成長期にある企業ではCFROIが低くなってしまうので注意が必要である。

経営パワー大全―最強起業家に学ぶ、戦略と実行のマネジメント ジョセフ・H. ボイエット (著), ジミー・T. ボイエット (著), Joseph H. Boyett (原著), Jimmie T. Boyett (原著), 加登 豊 (翻訳), 大川 修二 (翻訳), 金井 寿宏 (翻